
国会が、戦後最長となる95日間延長されることが決まった。会期は9月27日までとなる。この会期延長には、安保法案を成立させたいという狙いがあるのは間違いない。安倍政権の一丁目一番地の政策なので、是非ともやり遂げたいだろう。しかも、これまでの国政選挙では公約として掲げてきたのであるから、自民党には責任がある。公約に掲げて選挙に勝ったのに実行しなかったら、それこそ「嘘つき」である。
もちろん、安保法制を国会で議論する以上、野党は不十分な点を追求するのは当然である。徹底的に審議するのもやはり当然だ。95日も延長するのだから、十分な審議時間はあるので、徹底的に議論してもらいたいものだ。
あまりにヒドすぎる「枝野発言」
本コラムで繰り返し主張してきたのは、集団的自衛権は個別的自衛権に比べて、①抑止力が強いので戦争に巻き込まれるリスクが減ること②安全保障コストが安いこと③侵略戦争のブレーキになりうること、というメリットがあるということだ。集団的自衛権は、世界で否定している国(特に安全保障条約を他国と締結していればなおさらだ)が見当たらないほど、安全保障政策としてよりマシなのである。
こうした本質論は、国会で本格的に議論されていない。延長国会では、国民にこれらのメリットを広く知らせるいい機会である、
21日付けの朝日新聞で、民主党の枝野幸男幹事長が「憲法解釈を都合よく変えてよいとなったら、次は徴兵制ですよ、みなさん」と発言したと報じられた。今日のコラムでは、世界各国の徴兵制をみながら、徴兵制が合理的な選択肢としてあり得るのかどうかを考えてみよう。
同新聞によれば、その後枝野幹事長が、
「徴兵制だって、集団的自衛権と一緒で、憲法に明確に(禁止と)は書いていない。集団的自衛権は(憲法に)駄目と書いていませんが、長年の解釈で自民党自身もだめと言ってきた。いまは『徴兵制なんて考えていません。憲法違反』と、国会で答えている。だが、『(憲法は)苦役は駄目だと言っているだけで、徴兵は苦役じゃない、名誉だ』と言い出せば、憲法違反じゃなくなる。勝手に時の権力者の解釈で(憲法解釈を)変更できることにしたら、いずれ間違いなく、徴兵制は憲法違反じゃないと言い出す権力者がでてくる。そうなってからでは、遅い。(仙台市内の街頭演説で)」
と発言したと書かれている。
まず、徴兵制は、近代においては不必要になっている。兵器技術の進歩から、専門性に欠ける兵士は必要でない。はっきり言えば、素人は現代戦では足手まといなのだ。自民党の佐藤正久元防衛政務官(元陸上自衛隊イラク先遣隊)も、現代戦では、高性能の兵器やシステムを使いこなすことが求められ、それに要する期間は10年程度が必要と喝破している。