
あおむけのまま床に横たわった状態で、残されたユウキさん。ここでカメラは不自然な現象を捉えた。ユウキさんの顔が、真上のカメラの方を向いているのだ。あれほどひどかった斜頸が、すっかり治ったかのように。
この病院の院長は当初、ユウキさんの負傷の原因を「自傷行為」と説明した。だが後に「自傷行為はなかった」と説明を変えた。そうであれば、首の骨折はこの暴行で生じたと考えるのが自然だが、ユウキさんは暴行を受けた後、しばらくして立ち上がったことがビデオで確認できた。苦しそうにかがむ場面や、首を手で押さえて気にするような様子は映っているが、元日の夜も体は動いていた。
ユウキさんは床に布団を広げて横向きに眠った。2日の朝も、布団の上で脚が動いていた。午前9時半過ぎ、職員4人が入室。ユウキさんをあおむけにした後、1人が頭を手で軽く押さえるなどして栄養食を口に入れ、別の職員がおむつを確認した。
ユウキさんの体に明らかな異変が起こったのはこの時だ。脚の動きがぱたりと止まった。だが職員たちは気にする様子もなく、決まった手順を済ますと保護室から去った。
以後、カメラは無情にも、不随になったと思われるあおむけのユウキさんを記録し続けた。脚はだらりとしたまま動かず、時折、手がけいれんしたように震える。顔はやはり天井を向いている。病院がユウキさんの異変に気づき、救急車を呼んだのは翌3日の昼だった。