2015.09.06
# 雑誌

相次ぐ老人ホームの倒産〜突然の退去通知、そのとき何が起きるか?

「要介護600万人」時代の大問題
週刊現代 プロフィール

大手でさえも行き詰まる

もちろん、大手の経営も盤石というわけではない。

外食産業から参入し、有料老人ホームの大手となった「ワタミの介護」。入居者減で収支が悪化し、8月5日には米経済通信社のブルームバーグが、同社が介護事業の売却・撤退を検討していると報じた。同社はこれを否定しているが、経営が厳しい現実には変わりない。

有料老人ホーム 大倒産時代を回避せよ』などの著書がある高齢者住宅経営コンサルタントの濱田孝一氏は、こう話す。

「'00年に介護保険制度がスタートしてから、『今後、高齢者は増えるので介護は儲かる』という安易な発想で、不動産業者や地主、ひと山当てようというベンチャー企業など、介護とは縁のない様々な業種が大挙参入し、高齢者住宅の建設ラッシュが起きました。

しかし、こうした業者には介護事業の知識やノウハウがない。結果、質の高い職員が集まらず、それを見ている地域のケアマネも入居を勧めないので、入居率が低下する。

そこでさらにスタッフの人件費を圧縮しようとするので、職員が次々と辞めていく。すると、評判が落ちてさらに入居者が減少する。このような悪循環に陥り、倒産に至るケースが多いのです」

事業者側の事情はともかく、入居者にとってみれば、自宅を売却してその資金を入居費用に充てているケースも少なくない。突然、「潰れます」と宣言されても、戻る家もなければ、手持ちのカネも残っていない。いったいどうすればよいのか。

 

夫婦が別々のホームに転居

冒頭の大崎さんのケースを追ってみよう。従業員数30人ほどの建設会社で現場監督として働く大崎さん。ようやく子育てが終わったと思った5年前、独り暮らしだった父親(現在81歳)が、自転車で転倒。大腿骨などを骨折して車椅子生活となり、入浴も難しい状況になってしまった。

「子供二人を大学までやって、蓄えはほとんどなかった。自分たちの老後も心配なのに、いま私が会社を辞めて、東北の実家に戻るというのは難しい。それで実家のある市の包括支援センターでケアマネを紹介してもらい、相談の上、市内の介護付き有料老人ホームに親父を入れることにした。入居一時金300万円は実家の土地を担保に地銀から借りました」(大崎さん)

だが、入居からたったの1週間で、その施設の倒産・閉鎖が通告された。

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