冷蔵車からシリア難民71人の死体が
8月27日、オーストリアの首都ウィーン近郊の高速道路の路肩に、1台の冷蔵車(7.5トン車)が乗り捨てられていた。見回りの係員によると、猛烈な腐敗臭が漂い、ドアの隙間からは液体が漏れ出ていた。
最初のニュースでは、その中に20体から50体の屍体があるらしいということだったが、翌日には、その数は71体であったと報道された。
男性が59人、女性が8人、子供が4人。全員が難民で、オーストリア、あるいはドイツに密入国しようとしていたと思われる。国籍は、大半がシリア人らしい。死因は窒息死。あまりにも凄惨だ。ホラー映画よりも怖い。
難民問題については、このコラムですでに何度も書いている。シリア、イラク、アフガニスタン、パキスタン、ソマリア、エリトリアと、ありとあらゆる紛争地から、難民がEUに逃げ込んできて、難民申請をする。審査され、正式に難民と認められれば滞在の許可が出る。
申請は、EU域内に入ってからしかできない。もちろん、ビザを取ってEUに入り、そのあとで難民申請を行うケースもあるが、しかし、皆がそんな正しい手順を踏めるわけではない。そのため、多くが極めて悪条件、あるいは、高リスクな方法で密入国を試みる。
それを幇助し、暴利を貪っているのが国際犯罪組織だ。今やこの犯罪によって、麻薬の売買や売春よりもずっと莫大なお金が動いているという。
冒頭の冷蔵車の件では、ブルガリアとハンガリーの犯罪組織の人間がすでに4人拘束された。小さな冷蔵車に人間をたくさん詰め込めば、窒息死するに決まっているのだから、これはひどく稚拙で例外的な犯罪だったと思われる。
