ライバル車の欠点を探す
ライバル各社のクルマを大量に取り寄せ、モデルXと比べて他社のクルマがいかに面倒なシート配列なのかマスク自身が説明してみせた。
ホンダが北米で展開する高級車ブランド、アキュラのSUVでは、マスクが2列目に座ってみせた。7人乗りを謳ってはいるが、マスクの膝が前のシートの背もたれにつっかえて、顎に当たるような状態だった。これでは座れない。
「小人の国の洞窟みたいだ。外見だけ大きく作っても意味がない。車内を大きく作ることが大切なんだ」と言い切った。
こうやって次から次へとライバル各社のクルマの問題点を指摘していった。
「他社のクルマがどのくらいダメなのか知ることが大切だ」とマスクは自説を語った。
マスクの口からこういう言葉が飛び出した瞬間、驚いた。9年かかってどうにか3000台を生産した男が、毎年数百万台量産している自動車メーカーをコケにしているのだから。ある意味、滑稽な光景でもあった。
だが、マスクはいつも純粋な視点で語る。デザインと技術を選ぶときは、理想形のクルマに少しでも近づける方向で考えなければならない。
ライバル各社がどのくらいダメかは、マスクが決めることで、常に二者択一だ。妥協せずに優れたものを作ろうと努力するか、しないかしかないのである。努力していなければ、マスクは遠慮なく失敗とみなす。外部の人間には理不尽か馬鹿げていると映るが、それが彼の哲学なのである。
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