
【沿線革命063】“世界一の鉄道”に事件・トラブル多発!?

安全第一は当然だが、安全唯一ではいけない
ゼロか百かでなく、バランスの問題だが、私は、鉄道の「安全第一」は当然とした上で、「安全唯一」では社会的にも経営的にも好ましくないと考えている。「安全唯一」は私の造語で、安全でありさえすれば、利便性も効率性も経済性も斟酌しない考え方や判断基準を言う。
「安全」は、鉄道運行上の目標ではなく前提条件なのだ。食中毒を出さないことを唯一の目標とし、まずかろうが、冷たかろうが、高かろうがお構いなしのレストランは繁盛するはずがない。
食中毒を出さないことは言うまでもない前提条件で、その上で、美味しくて安い料理を出してこそ価値がある。
鉄道も、安全を唯一の目標とし、混もうが、遅かろうが、本数が少なかろうが、高かろうが、年中止まろうが、止まったらなかなか動かなかろうがお構いなしで良いはずがない。
安全は言うまでもない前提条件とした上で、鉄道をより便利で安上がりなものとしたい。
トラブル波及は「やり過ぎない直通運転」で緩和
安部教授はさらに、直通運転の広域化に関して「何も問題がない時はスムーズにいって非常に便利だが、障害が起こると複数の路線にまたがり回復が非常に難しい」と続ける。
【031】では、その解決策として「やり過ぎない直通運転」を提案し、上野東京ラインと湘南新宿ラインと関係路線の時刻表案を示した。
ただし、どこまでやると「やり過ぎ」かは、鉄道事業者の輸送計画や運転整理の力量による。乗り換えなしに多くの場所へ行け、かつ輸送障害は最小化される鉄道を実現したい。
京急は事故時の折り返し運転をすぐに始める
続いて、京浜急行があえて運行管理システムを導入せず、4つの運輸区で区間を分担し、普段から人力により運行管理することにより、トラブルに強い様子が紹介された。
実施の事例として、下図のように追浜で人身事故が発生してから10分以内に、金沢文庫から臨時列車を出発させ折り返し運転を始めたという。
以降、下りは金沢文庫止まり、上りは金沢文庫始発として折り返し運転とし、金沢文庫から都心方はぼぼ定時運行とできる。
京浜急行では、トラブルの起きた場所に応じて折り返し運転する駅を予め定めており、番線の変更、運転士・車掌の乗務変更、お客様へのご案内等がパターン化されており、支障のない区間への影響を最小化できるようになっている。