教育すると、人間は「弱く」なる! 各界から大注目の武術家・光岡英稔が明かす「強さ」のヒミツ
独占・最強インタビュー(1)
ハワイで武術を教える
−−高校を卒業後にハワイへ行かれますが、どういった事情で?
また両親の気まぐれです。私は知人を頼ってオーストラリアに行く予定でしたが、都合が悪くなり、両親と一緒にハワイへ行くことになりました。その頃は、もうとにかくこれ以上日本にいたくないという気持ちでした。
推薦で大学へ行くこともできたけど、大学を出て就職するみたいなコースが当然とされている世の中についていけなかったんです。息苦しくて仕方ない。
ちょうど学んでいた大東流合気柔術の岡本正剛先生に「ハワイへ行かれるのなら、そちらで教えてみては」と言っていただけたこともあり、移住しました。
−−自宅と会社の往復を人生とみなす生き方は耐え難かったのですね。
そうですね。
もっとも、ハワイへ行ってみたら、それはそれで適応するのがたいへんでした。というのも日本とはあまりに真逆の社会で、脳みそが溶けてしまうんです(笑)。環境がいいから世の中のことはもうどうでもよくなる。
「このままここで一生何もしなくてもいい。フルーツもなっているし、毎週どこかでパーティしているから食べ物もあるし」とわりと本気で思えます。

−−染まりきれました?
最初は「なんだこれは?」と戸惑いましたね。やはり日本の暮らしで学んだ「きまじめさ」が身に沁みていたのです。
たとえばハワイアンは時間を守らない。しかもそれを当然のこととしている。そういう態度がまったく理解できませんでした。
時間通りに物事を行うという考えがない、というより、そもそも時計で測れるような時間という概念がない。だから、どうやって予定を合わせればいいのかもわからないんです。なんであれ「イッツオッケー」と言われるだけ。何がオッケーなの!?と。
完全にフィーリングだけなので、武術を教えるにも「何時から何時まで」と時間を決めることができませんでした。
−−稽古となると日本では、先生より先に生徒が道場にいて開始時間には整然と並んでいるというイメージがありますよね。
ハワイだとまず時間通りに生徒は来ません。そのうちやっと集まり出す感じです。あるいはそろそろ終わりかなという頃に来て、あとはだべって帰る人もいます。そういう感覚に慣れるのに3年くらいかかりました。
−−遅れたとしても来るからには、いちおうは学びたいんですよね。
いや、コミュニティに属したいのでしょう。技術的に習いたいという気持ちはほんの少しだと思います。