2015.11.01

科学界の「あの騒動」を彷彿!? 論文偽装に秘められた謎を解け!

【特別対談】伊与原新×朱野帰子~わたしの知らない理系の世界
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それを壊すなんて、とんでもない

朱野 結末はネタバレになってしまうので伏せますが、研究の真実ってなんなのだろうと考えさせられました。STAP騒動の後だから余計にそう思うのかもしれません。

さらに『ルカ』の中には「生命はどこから来たのか」という大きな大きな謎が用意されています。「ヒアデス」の故郷である火星からなのか、それとも別の場所からなのか。もちろん作中ではけりがつきません。この壮大さにすごくワクワクします。

ちなみに現実では、生命火星発生説は優勢というわけではないんですよね。

伊与原 火星探査機キュリオシティの成果がイマイチでした。でもそもそも火星は分からないことだらけなんです。くわえて、小説としては余白がある方が、素敵かなと。

作中に、実在する火星隕石「ALH84001」の話を出しました。「火星隕石に微生物の痕跡が」「生命起源と見られる磁鉄鉱(磁気を帯びた鉱物)が出た」というニュース、僕は地球物理をやっていて、まさに磁鉄鉱で昔の地磁気を復元しようとしていたので、とても驚きました。

ただ、地惑ジャンルって検証が難しいんです。「この隕石から新発見が!」と言われても、火星から新しくとってくるわけにはいかないので、追試したくても試料が手に入らないんです。

朱野さんがお好きな深海もかなりシビアですよ。ずいぶん前ですが、インド洋にある、ロドリゲス三重会合点という三つのプレートが交わった場所由来の岩石を分析しました。かんらん岩が水と反応して蛇紋岩化してるんです。

朱野 蛇紋岩! 海洋生物学では今すごくアツい岩ですよね。地震の発生や、生命の起源に関わっているとか。

伊与原 そうなんです。その蛇紋岩化作用の中で磁鉄鉱が生成されるので、それを調べてほしいと。どうせなので加熱したり潰したりしようとしたら、頼むから非破壊検査だけにしてくれと懇願されました(笑)。

朱野 一回潜るのに一千万円以上かかりますからね。『ルカ』の中ではそんな大事な試料である隕石が、犯人の手によって違う形に加工されてしまいます。専門の方が読んだら悲鳴が上がりそうですよね。

伊与原 このアイディアを提案してくれたのは朱野さんと共通の担当編集です(笑)。

朱野 「宮沢賢治に鉱物なんて出てきました?」と聞いてきた担当ですね!

伊与原 「隕石って加工できないんですか?」と言われて、そんなご無体なと。石に興味がない人は発想が斬新でした・・・・・・。

朱野 鉱物好きからすると、斬新というより、残酷に近いですよね。もう一つ、巻末の参考文献に科学論文がずらりと並んでいるのも、心憎い仕掛けです。

伊与原 これは、FFPのネタを書いてるのに、人の研究成果を素知らぬ顔で小説にしたらまずいでしょうということで(笑)。

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