
杭打ち業者の告白
住宅業界も建設業界も下請けの杭打ち業界も、そして何より監督責任がある国土交通省も、誰もが知っているのが、「杭打ち偽装をやっているのは、旭化成建材だけじゃない」ということだ。
国交省住宅局OBが率直に漏らす。
「杭打ち偽装は、住宅建設業界が抱える構造的な問題だ。工期が限られているうえ、一次、二次、三次と多重下請け構造のなかで工事が行われるから、チェック体制があいまいで責任が分散してしまう。『見て見ぬふり』が横行するなかで、たまたま52本の杭のうち8本が未到達の手抜きマンションで発覚した。
この数は異常だが、手抜き工事やデータ偽装は日常茶飯で、今、発覚している事例は氷山の一角だ」
ほころびは日々、表面化している。当初、旭化成建材は、「ルーズな人間で、事務処理が苦手そうだなと感じた」(旭化成建材・堺正光常務執行役員)という横浜市都筑区のマンション杭打ちの管理担当者個人の問題にし、この担当者の関係した物件に限った調査を行っていた。
ところが、自治体も交えた幅広い調査のなかで、複数の現場管理者が偽装に関与していたことが判明、会社ぐるみの偽装である可能性が高くなってきた。
国交省は、2日、旭化成建材の立ち入り検査を実施、同社の組織運営や施工管理の実態を解明、データ偽装が常態化していたかどうかを調査する。その結果、おそらく「常態化」が疑われる。
さらに問題が波及するのは、データ偽装の常態化が他の杭打ち業者にも当てはまるからで、旭化成建材1社の問題だけではないことが判明、業界全体の問題となって国民を震撼させよう。
なぜデータ偽装は起きるのか。ある杭打ち業者が明かす。
「横浜で指摘されたスイッチの押し忘れや雨で記録紙が濡れて波形記録が見えなくなり、データを転用・加筆したりするのは、実は、よくあることなんです。
元請け(のゼネコン)はそれを知っていても、とにかくデータを出させて形を整えようとする。だから我々は、悪いとも思わず、それに応える」
つまりは、データ偽装の常態化である。