2015.11.10

シャープを巨額の税金で「救済」する価値はあるのか? 市場原理をゆがめるな! このままではJAL、東電の二の舞になる

【PHOTO】gettyimages

目を覆いたくなるような惨状

シャープの経営危機が深刻化していることの象徴だろう。先週初め(11月2日)、同社の株価は、取引時間中に約50年ぶりという安値を付けた。

先々週末に発表した2015年度上期(2015年4~9月期)の連結最終損益は836億円の赤字で、通期で2期連続の最終赤字を回避することに暗雲が漂っているのだから、無理もないだろう。

そんな中でくすぶっているのが、官民ファンド「産業革新機構」によるシャープ救済案である。同社の主力商品である液晶を様々な工業製品で不可欠な“産業の米”とみなして、この分野を中国、韓国勢に牛耳られないために保護する必要がある、というのが救済の大義名分だ。

しかし、“産業の米”と言えば、かつての鉄鋼にしろ、半導体にしろ、今や特殊な製品とは言えず、価格本位で仕入れればよい製品だ。そんな論理を盾にシャープ救済を目論む案には、「だから官民ファンドなど不要なのだ」と首を傾げたくなる。

誰の目にも明らかなのは、目を覆いたくなるようなシャープの惨状だ。

先月(10月)30日発表の2015年4~9月期連結決算によると、売上高は前期比3.6%減の1兆2796億円、営業損益は251億円の赤字(前期は292億円の黒字)、経常損益は386億円の赤字(前期は107億円の黒字)である。そして最終損益は前期の47億円の黒字から836億円の赤字に転落した。

同業のソニーやパナソニックが復調軌道に乗る中で、相変わらずシャープは1人負けだ。2012年3月期に3760億円の最終赤字、2013年3月期に5453億円の最終赤字を出した後、2014年3月期に115億円の最終黒字を確保したものの、2015年3月期に再び2223億円の最終赤字に転落。

同社は2016年3月期の最終損益の会社予想を発表していないが、上半期の状況をみると、通期でも最終赤字の脱出が難しい状況にあることは明らかだろう。

シャープは今年6月、巨額最終赤字の発生に伴う経営破綻を回避するため、減資による利益剰余金の欠損の解消と、増資(優先株発行)による資本増強を迫られた。

安易としか思えない判断で、その支援に応じたのは、みずほ銀行、東京三菱UFJ銀行のメガバンク2行と官民ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)である。引受額はメガバンク2行がそれぞれ1000億円、JISが250億円だった。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら
SPONSORED