
財務次官が「可能性はあります」
先週の某日夜、財務省の田中一穂事務次官と会食する機会があった。当方は、筆者を含めて数人のジャーナリトの面々。毎度ながら言い訳で恐縮だが、完オフ懇談なので当夜の会話の仔細を紹介するわけにはいかない。
だが、驚いたことに翌日の『日本経済新聞』(電子版)に以下のような記事があったのだ。
<麻生太郎財務金融相は13日午前の閣議後記者会見で、企業の内部留保への課税を求める声が一部で出ていることについて「二重課税になる。安易にやるべきではない」との考えを述べた。企業の内部留保が積み上がっている背景として90年代以降の株価などの下落を受け、経営者が依然として慎重になっている見方を示した。>
それだけではなかった。同日午後、時事通信も次のような記事を配信している。
<自民党の中堅・若手議員でつくる勉強会「次世代の税制を考える会」(幹事世話人・鈴木馨祐衆院議員)は12日、企業の内部留保への課税を検討するよう政府や党税制調査会に働き掛けていく方針を固めた。>
冒頭に「某日夜」と記したが、隠しても意味がない。実は田中次官との会食は12日のことである。なぜ、驚いたのかである。完オフ懇談だが、以下の一点だけは良しと判断、田中次官が述べたことを紹介したい。
当夜の懇談で筆者は、まさに「最近、内部留保税が取り沙汰されているが、次官はどう考えておられるのか」と質問した。驚いたことに、田中次官がアサッリと「内部留保課税ですか?考えているといえば、考えています」と認めた上で、「(省内で)欧米のヘッジファンドの連中と付き合っている者たちからの提言として、そうした話があります」と語った。
加えて、「実は『スカーレット・レター』と呼んでいるのですが、利益を設備投資に回さない、人件費を上げない、それでいて海外のM&Aにつぎ込むような企業を『赤』や『青』に色分けして各々に課税する。薄く広くですが。まあ警告の意味ですが、検討しているといえば、検討しています」と断じたのである。
翌日の麻生大臣会見と時事配信、これは果たして偶然であったのか。正直言って筆者は、この「スカーレット・レター」(緋色の文字)という言葉そのものを知らなかった。週が明けた今週初めに専門家に教えを請うた。
その人物の受け売りである。語源は、清教徒で姦通者に懲罰として赤い色のアルファベットの「A」の一文字を胸に付けさせたことに由来するという。要は、違反者・汚い者を皆に特定することで孤立感と屈辱を味わさせる罰則のことだ。