'70年代、ポルノ文化で世界に衝撃を与えたスウェーデン。いまや世界有数の幸福度を誇るようになったこの国の、最新セックス事情をお届けする。
セックス革命、再び
スウェーデンの「セックスフリー」は、全世界に衝撃を与えた。'60年代後半から'70年代前半にかけて世界中で吹き荒れた「性革命」の嵐のなかで、とりわけ最先端を走っていたのがスウェーデンの若者だった。
「それまではスウェーデンでもセックスは隠すべきもので、結婚するまでしてはいけないことだと抑圧されていたんです。それに反発するように女性解放運動が起こり、ピルが導入され、女性が妊娠を気にせずにセックスを楽しめるようになった。これで性規範がガラリと変わりました」(東京学芸大学研究員で、スウェーデン在住の中澤智惠氏)
女性は慎ましくあるべきだと言われてきたのが一転、女性は自らの性欲に忠実であることが社会的に容認された。女性のほうから自発的に男性をセックスに誘い、快楽を求める。スウェーデンは「愛と悦楽の国」として世界に認められた。その熱気は極東の島国まで届いた。「スウェーデンポルノ」に胸を躍らせ、北欧への憧れを募らせる少年が続出したのだ。

あれから半世紀近くが過ぎ、かの地の「性革命」の旗手たちも年を取った。だが、その情熱は失われてはいない。今もなお、彼らの性の世界には革新が続いている。
「ED治療薬が、スウェーデンの中高年カップルに再び革命を引き起こしました。勃起力の減退で、お互いの愛撫だけに留まっていたセックスが挿入を伴うようになったのです」(スウェーデン人ジャーナリスト)
イエテボリ大学に所属するニルス・ベックマン氏が'08年に発表した論文によれば、70代の男女は「現役」で性生活を楽しんでいるという。
ベックマン氏が言う。
「スウェーデンの70代男性は実に66%が積極的な性生活を経験しています。'70年代には47%でしたから、割合は当時より増えているのです。同世代の女性も'70年代には12%だった割合が36%と、3倍近く増加しています。
性生活を楽しんでいるのは、70代だけではありません。90代男性の26・7%、女性の4・7%が性的な興奮や情熱といった感情を維持していることもわかりました」
いくつになってもセックスをするために必要なものは何か。スウェーデン人は「相手への敬意」だと口をそろえる。
セルマ・ビョルケルさん(仮名・36歳)が教えてくれた。
「私の両親も66歳だけど、週に何回もセックスしているわよ。白髪になってもセックスする。これがスウェーデンのスタンダードなのよ。
日本の女性は結婚すると家政婦のようになり、子供ができたらセックスレスになってしまうのが理解できない。夫婦であってもお互いのプライベートな時間は尊重し、その上で二人の時間はきちんと取る。そうすれば良好な夫婦関係は長く続くし、相手への敬意と愛情があれば、セックスをする気持ちにもなるのよ」
もちろん、加齢とともに体力も勃起能力も減退していく。それでもセックスが可能なのは、彼らのセックスが時間をかけて絶頂へと上り詰める「ロングロングSEX」だからだ。

来日経験のあるスウェーデン人医師は、日本でラブホテルの存在に驚いたと言う。
「中年男性が若い女性を連れて入る光景も見ましたが、日本人は2時間でセックスをするんですって? そんなこと、スウェーデンでは考えられません。お互いを褒め称える会話から始まって、食事を楽しみ、十分にスキンシップを取ってから、ようやく挿入です。これらすべてのプロセスがセックスなのです」
夫婦生活が長くなると、相手と離婚や死別してしまうこともある。再び単身者となったとき、改めてセックス・パートナーを探すことにも、スウェーデン社会は寛容だ。前出・中澤氏はこう語る。
「日本では40代を過ぎると、新しく性的なパートナーを見つけるのが難しくなります。ところがスウェーデンでは、いくつになっても相手は見つかります。社交の文化が根ざしていて、パーティーにカップルで参加する習慣も影響しているのかもしれません。
中高年の女性がパブで『ナンパ待ち』をしたり、ネットでパートナーを探したりすることは当たり前。一晩限りの関係であっても、二人が合意していれば差し支えはありません。日本では閉経すれば『性生活は終わり』と考える女性もいますが、スウェーデンの女性はそうではない。男女ともに年齢は関係なく、セックスを含めたパートナーを求めているのです」
では、性に開放的なスウェディッシュは、いざベッドインしたら、どんなテクニックを駆使するのか、見ていこう。