2015.12.15
# 本 # 現代新書

「人材派遣業」の闇〜あまりにブラックすぎる実態を潜入レポート

中沢 彰吾

人材派遣会社と、それに密接につながる企業相手の人減らしコンサルタント、インターネット職業紹介企業の3社が協力して編み出した違法なシステム「奴隷派遣」が日本社会に広まっている。

労働者を隔離して自由を奪った機械のような単純労働。より困難な業務の場合はマニュアルによる同一行動。緊張感を持たせて能率を上げるために私語を禁じ、手先の業務でも立ちっぱなしで座らせない。さらには監視役を立てての行動規制……。

先の世論調査では労働者を40階の職場集合とせず、いったんビル前の広場に集合させエレベータや通路を移動する間もずっと監視していた。休憩時間になってもほかのフロアや地下の飲食フロアへの立ち入りは厳禁とされた。ほかのフロアへ行けないように、通路や階段には事件現場のような規制線のテープが張られ、常時、監視役の若者が立っていた。

ターゲットは若者ばかりではない

非正規労働者の処遇改善が叫ばれて久しい。そもそもこの世論調査は3日間だけだから30日以内の「日雇い派遣」にあたる。あまりに短期の派遣労働は人材派遣会社と派遣先企業双方での適正な雇用管理がなされず、労災等の弊害も発生しやすいという理由で、2012年10月1日施行の労働者派遣法改正で原則禁止になった。

だが、人材派遣会社は法律など眼中になく、日雇い派遣を拡大させるとともに賃金や待遇を悪化させている。彼らのターゲットは今や若者ではない、日々増加する働き口に恵まれない中高年が利用されている。

民主国家における健全な労働とは、雇用主と労働者との間に信頼関係があって初めて成立する。人材派遣会社は派遣労働者の雇用主だ。だが、信頼関係を築くどころか、仕事内容や待遇面で嘘をついて、健康に問題がある人でも過酷な労働現場に送り込み、支払うべき賃金を踏み倒す。

極めて違法性が高く、労働者からの救済を求める訴えがあるにもかかわらず、各都道府県の労働局や厚生労働省の労働基準監督署は一向に対処しようとしない。いったいなぜなのか? 悪い冗談に聞こえるかもしれないが、中央官庁や地方自治体の多くが違法な人材派遣会社のお得意さまだからだ。

この問題が根深いのは、経費削減や税金の無駄遣いの防止、法律遵守や公共の福祉への貢献を求められる多くの団体、企業が、事業入札に安値で臨む人材派遣会社を「歓迎」していることである。落札させる際、その人材派遣会社が労働者をどう処遇しているかはまったく考慮されない。

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