2016.01.20

中国人団体旅行ツアーの裏側
〜横行する「キックバック」要求、人気の定番コース、料金まで

東京・銀座で「爆買い」した中国人団体旅行客。2015年2月〔photo〕gettyimages

文/中島恵(ジャーナリスト)

訪日ツアーの「定番」

いよいよ2月8日から中国の春節(旧正月)が始まるでしょう? 化粧品のお土産セットを作って、中国語のPOPもつけます。今年はうちも大忙しになるんじゃないかな?

東京・銀座からすぐの路地裏にある小さな薬屋の男性は、明るい表情でこうつぶやく。銀座に大挙して押し寄せる中国人団体旅行客が、最近では2~3時間あるフリータイムを利用して脇道も散策するようになり、この小さな薬屋も、爆買いの“おこぼれ”に預かるようになったのだ。

この2年ほどだろうか。老舗が軒を連ねる銀座に足を運んだ人ならば、隔世の感に驚いたに違いない。中国からの団体旅行客を載せた大型バスが次から次へと大通りに停車し、中国人客を乗降させているからだ。

現在のところ、来日する中国人客は団体客と個人客がほぼ半数。以前は団体客が中心だったが、徐々に個人で旅行する人が増えてきている。しかし、日本人の目に強烈に焼きついているのは、やはり団体客が取る集団行動だ。

そもそも、中国人の団体ツアーとはどのようなものなのだろうか? 日本人が知っているようで意外に知らないその内容と料金、そしてツアーの実態とは――。

団体ツアーについて上海在住の中国人の友人に聞いてみると、おおまかな内容は次のようなものだった。

1日目:成田空港着
2日目:東京ディズニーランド
3日目:東京都庁→銀座→浅草寺→横浜中華街
4日目:横浜→箱根→新幹線の車窓から富士山を眺め、名古屋に移動
5日目:名古屋→京都(清水寺、八坂神社など)→大阪(USJ)
6日目:関西国際空港から帰国

これは一例であり、コースの行き先の選択肢はもっとある。東京ではお台場や秋葉原、皇居に行く場合もあるし、箱根に行かず、富士山を見るために忍野八海(山梨県)などに足を伸ばすのも人気。

関空から入って黒門市場、心斎橋などを巡り、東京へと向かう逆のルートもあるが、主に東京―大阪間(業界では「ゴールデンルート」と呼ばれる)が団体旅行の定番だ。

最近では、「もうゴールデンルートには行ったので、次は北海道か九州一周旅行を」という人もいるが、観光庁の調査によると、来日する中国人の約6割がまだ「初来日」であることを考えると、定番は揺るぎないといえそうだ。

料金も季節によって変動するため一概にはいえないが、沿海部の大都市から上記のコースに申し込むと、5000~6000元程度(約9万5000円~約11万4000円)だという。ホテルだけでなく食事もほとんどついていることを考えると、中間層かもう少し上の層から見て「お得な料金」(上海の友人)。

ちなみに、中国人にとって日本より1000元前後格安で身近なのは韓国のソウルや済州島だ。ただし、日本の場合は都市によって見どころが異なり、ショッピングをメインに考えた場合、彼らにとって、やはり魅力的な行き先と映るようだ。

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