
セブン‐イレブン創業者の鈴木敏文氏はこれまで、日本の流通業の歴史を塗り替える数々の「新しいこと」を発案し、実現してきた。運とチャンスのつかみ方を明かした【前編】に続き、ビジネスを成功に導く「仮説の立て方」を伝授する。
仮説の立て方
前回、秋元康さんと「二匹目のどじょう」の話で盛り上がったことを明かしましたが、秋元さんもことあるたびに、こういういい方をされるそうです。
「ひまわりがブームになっているときには、たんぽぽの種をまこう」
国民的アイドルグループとなったAKB48もそうして生まれたのでしょう。「柳の下のどじょう」ではなく、「ひまわりがブームになっているときのたんぽぽの種」を自分で考えつく力が求められるのです。
わたしたちは「仕事」と「作業」をよく同じ意味で使う。しかし、鈴木氏によれば、決定的な違いがあるという。ポイントは「仮説」が入っているかいないかだ。
「仕事」と「作業」はどう違うのか。作業はあらかじめ正しい答えがわかって行うのに対し、仕事は自分で答えを出していかなければなりません。
大阪へ出張に行って取引先と交渉してくるとき、大阪へ行くこと自体は誰でも行き方の答えを知っているので、作業にすぎません。一方、交渉は相手とのあいだで答えを導き出し、問題解決をしなければならないため、仕事になります。
ただし、自分で導き出した答えが正しいかどうかは、それを考えた時点ではわからないため、あくまでも「仮説」です。
その仮説はどのようにして立てればいいのでしょうか。
具体的に、セブン-イレブンの店舗では毎日、気象情報などをもとに翌日の売れ筋商品の仮説を立て、発注し、販売の結果をPOS(販売時点情報管理)システムのデータをもとに検証するという「仮説・検証」をくり返します。これをオーナーや店長だけでなく、パートや学生アルバイトも日々実践します。
この仮説の立て方について、わたしがよく例にあげるのが、次のような「海辺のコンビニの梅おにぎり」の話です。