
投資信託の残念な構造
アベノミクスに伴う株価の上昇などここ数年が運用に向いた環境であったことに加えて、2014年から始まったNISAの影響もあって、投資信託はかつてよりも知名度を増しているし、資産残高も増える傾向にある。
しかし、よく売れている投資信託には、投資の専門家が見て「良い」と言えるものはごく少なく、「なぜ、このようなファンドが売れるのか、分からない!」(投資信託のようにひとまとまりのお金を運用する単位を「ファンド」と称する)と言いたくなるような投信がよく売れているのが、現状だ。
但し、いわゆる売れ筋のファンドが「なぜ、売れるのか」の理由は分かっている。それは、証券会社や銀行といった販売会社が熱心に売るからであり、投資信託という商品の実質的な選択が、最終消費者たる投資家ではなく、販売者によって行われているからだ。そして、販売者が熱心に売るファンドは、手数料率の高いファンドなので、必然的に投資家にとっていい商品ではない。
この残念な構造は、筆者の知る限り、投信業界の自由化が進んだ1990年代以前も以後も大きくは変わっていない。1990年代には、91年に外資系の投資信託運用会社の参入が認められるなど投信運用会社の新規参入条件が緩和され、1998年には銀行の窓口でも投信を売る「銀行窓販」が解禁された。
しかし、前者はむしろ投信の手数料を引き上げる方向に働いたし(運用会社は販売会社に自社の商品を売って貰うために、より手数料が高い商品を競うように投入した)、後者も販売会社の手数料稼ぎの傾向を抑止する要因にはならなかった。
それでは、投資家にとって本当に「良いファンド」はどうやったら分かるのか。