2016.01.29
# テロ

大炎上イラスト集『そうだ難民しよう!』そのシンプルすぎる世界観が覆い隠したものとは?

辻田 真佐憲 プロフィール

「ホワイトプロパガンダ漫画家」を名乗る理由

『そうだ難民しよう!』の巻末には、短いあとがきがついている。はすみ自身がプロパガンダの定義や方法論について述べた貴重な文章だ。ここに、彼女が「ホワイトプロパガンダ漫画家」を名乗ったヒントも隠されている。

やや錯綜した文章ではあるが、その内容は以下の3点に整理することができる。

(1)プロパガンダの定義
・プロパガンダは「特定の思惑へ人を誘導する意図を持った宣伝行為」である。
・プロパガンダは単なる「ツール」であり、「使う者の意思」によってその善し悪しが決まる。

(2)プロパガンダの歴史観
・これまで「サヨク達」=「敵」はプロパガンダを巧みに操り、「自分たちの利する世の中へと民衆を誘導」してきた。
・これに対し、私は真実を伝えるためにプロパガンダを行う。

(3)プロパガンダの方法論
・民衆は理屈よりも感情的な表現を受け入れる傾向がある。
・そのため、「サヨク達」は、音楽、ドラマ、映画など「感情に訴えかけるツール」をプロパガンダの手段として利用してきた。
・これに対し、私は「絵」を利用する。視覚に訴えかける「絵」こそ、「単純明快、最良最適のプロパガンダツール」だからである。

プロパガンダに対する理解としては、深い部分も浅い部分もある。だが、ここはさきへ急ごう。

はすみはこのあとがきで明言していないが、プロパガンダには「ホワイトプロパガンダ」と「ブラックプロパガンダ」の区別がある。簡単にいえば、真実性の高いソースにもとづいたプロパガンダが「ホワイトプロパガンダ」であり、反対に、真実性の低いソースにもとづいたプロパガンダが「ブラックプロパガンダ」である(詳しくは、山本武利『ブラック・プロパガンダ』を参照されたい)。

やや乱暴だが、「本当のことを効果的に広めよう」というプロパガンダが「ホワイトプロパガンダ」であり、「嘘の情報をばら撒いてやろう」というプロパガンダが「ブラックプロパガンダ」であると言い換えてもいいかもしれない。

以上を踏まえると、はすみはこう考えているのだろう。「サヨク達」は「ブラックプロパガンダ」を行っている。これに対し、私は漫画を通じて「ホワイトプロパガンダ」を行うのだ、と。

彼女が自らを「ホワイトプロパガンダ漫画家」と名乗るのは、こうした背景があると考えられる。

関連記事