
文/渡辺将人(北海道大学)
トランプが掘り起こした新たな支持者
2016年大統領選挙の幕開けとなるアイオワ党員集会が、現地時間2月1日の夜に行われる。日本時間2日昼には大勢が出る見通しだ。
筆者にとって党員集会の現場入りは2008年以来3回目である。同州東部を定点に、両党の候補者によるタウンホールミーティング、ビル・クリントンなど元大統領のほか知事、連邦議員などの応援活動、各陣営事務所の現場から浮き彫りになる「空気」を数回にわたって報告する。
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「第3候補的な人物」が2大政党内で善戦している中、共和党地方幹部はドナルド・トランプが共和党に新たな支持層を取り込む可能性を予見する。なるほど、トランプのイベントにアイオワ州で参加してみて驚かされたのは、「初めて政治イベントに来た」と告白する無党派層参加者の姿だ。

彼らは必ずしも熱心な共和党支持者ではない。多くはこれまで党員集会にも参加したことのない層だ。民主党支持の労働組合員ではないが、白人ブルーカラー層で圧倒的に男性が多い。「共和党右派」というカテゴリーにも単純におさまらない。
8月以降、筆者はアイオワ訪問時にラトガース大学のD・レドロスク教授と共同調査をしているが、同教授と筆者の州内各地の感触で共通しているのは、トランプ・イベントの参加者に「党員集会の方法も、自分はどの会場かも知らない」と開き直る人が少なくないことだ。
彼らが党員集会のシステムをにわかに勉強し、2月の寒い夜に面倒くさがらずに集会に行けば、「トランプ旋風」は本格的な離陸をする。他方、トランプ演説への好奇心は過激発言の「芸能人」見たさだったとすれば、世論調査ほどの結果は出ないかもしれない。
アイオワでは当日も党員集会参加の登録を受け付ける。共和党地方委員は、共和党に登録していない無党派層のトランプ支持者が、突然大量に押し掛けてきて困らないように、念のために各会場に当日登録の用紙を多めに準備する指示を出している。
ただ、「戸別訪問の感触では、トランプVSクルーズの批判広告合戦に有権者が幻滅し、党員集会の参加率がかえって伸び悩む感触もある」とクルーズ陣営のスタッフは述べる。