2016.04.10
# 本

カラスはかわいい鳥です!! 「カラス萌え」の専門家が書いた入門書がおもしろすぎる

―カラスを研究対象に選ぶのは珍しいのですか?

松原 学術的な意味で言うと、カラスの研究はやりにくい割にうまみがないです。そうですね、たとえばカノコバト、台湾などにいるんですけど、キジバトと同じ手法で調べたらキジバトと同じ事がわかりました〜では研究成果にならないですよね。なにかしら新しいことを知りたい。

カラスの生活はわかる範囲ではごくふつうの鳥です。ただ、そこから先をやろうとすると大変です。捕獲するのが面倒、行動範囲が広くキロメートル単位なので、追跡するのはまず無理。下手に捕まえると顔を覚えられちゃう。寿命も長く10年から20年ですから、結果が出るのが遅い。

僕が学会で発表し始めたころに、「へえ、カラスってデータ出せるんだ、定量化できるんだ」って言われました。地上滞在時間とか、何歩目で餌を採ったとか、ということですけど。

―『カラスの教科書』では、巣立ってからの集団生活と、独立して縄張りをもってからのペアでの生活があるのに、驚かされました。

松原 青年期と大人のペアの生活が全然違うというのは重要なんだけど、知られてないんですよ。

カラスが群れていると怖い、と言いますよね、あれは実は怖くない。群れているのは、ただ若いカラスがうじゃっているだけだから、まさに烏合の衆。守るものもない。逆にペアは子供を抱えているかもしれない。ペアでがんばっているのは、危険です。やられるとしたら、そっちです。

―ハシブトガラス、ハシボソガラスの区別も知りませんでした。山手線の内側がハシブトガラスの縄張りで占められているというのにも驚かされました。

松原 カラスが二種類いるというのは、バードウォッチャー以外にはあまり知られてないかな。東京のカラスはデカかった、とよく聞くんですが、それはカラスの種類が違うからなんですね。

―ハシボソガラスは石をめくって昆虫を見つけたり、辛抱強そうですね。

松原 ハシボソは勤勉で地味。黙々と餌を探す。ハシブトは面白そうなものがあるとピーッと飛んでくる。しばらく見てつまらないと思うとすぐに飛んでいってしまう。

―ハシブトガラスは森のカラスが都会に順応したということでしょうか?

松原 そうですね。森の中で木の実などを、うろうろしながら探すことをしてたんでしょうが、街の中だとそれに似た行動ができるんですよね。電線の上からゴミが落ちてないか探す。ハシボソもやってもいいんですけど、彼らは地道に歩いて探す。街の中でも。

―京都では、縄張りが交互にあったようですね?

松原 京都はそうですね。朝からゴミを漁るのはハシブト。農学部附属農場がハシボソ。繁華街、市街地はハシブトが多いです。ハシボソの縄張りには、お寺や緑地や川がある。

―街のカラスと田園のカラスというところでしょうか?

松原 ところがハシボソは埼玉県の大宮など、わりと大きな駅前とかにもいます。街の大きさにもよるんじゃないでしょうか。東京が変。何キロ四方にもわたってハシブトしかいない。まさにハシブトの首都。何でも東京基準で考えがちだけど、カラスに関しては、東京がむしろおかしいと言ったほうがいいかもしれませんよ。いきすぎた環境です。

外国で東京の状況に近いと言えそうなところは、インドのムンバイかな。ゴミが散らかっていたり人が寝ている街路をイエガラスがぽこぽこ歩いていて。

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