モールは新陳代謝する
ただし「巨大さ」のみが、現代のモールを特徴づけているわけではない。より重要になるのは、2000年以降のモールがいわば人工的に「新陳代謝」を続ける仕組みを整えていくことである。
その前提になるのが、2000年の「借地借家法」の改正である。戦後、借家の権利が強化されて以降、立て替えといった特段の事情がなければ、借家人の入れ替えは難しくなった。
これは商業施設でも同じであり、郊外のショッピングセンターにしろ、市街地の百貨店や商店街にしろ、一度認めたテナントに退店を求めることは事実上不可能になっている。それが少し前につくられたショッピングセンターや百貨店、商店街に、昔ながらの店の集まる「懐かしい」商業空間を留める原因になっている。
対して、2000年に業界主導によって改正された「借家借地法」は、あらかじめ年数を明記したいわゆる「定期建物賃貸借契約」を可能にした。そのおかげで今ではモールは、時代や客の嗜好に合わせ、契約を打ち切り、テナントを自由に変えることができるようになっている。
こうした人工的な「新陳代謝」こそ、現在のモールの魅力の核心にあるのではないか。2000年以降につくられたモールや、高い保証金を払い契約変更した大手系列のモールでは、時代の嗜好にあわせテナントを自由にピックアップし、利益を最大化するように店をデザインできるようになっている。
初発には流行りのテナントを思い切って選び、その後はモール全体の雰囲気の調整や、さらには時代に合わせたリフォーム――近年、「経年優化」と称される――に取り組めるようになったのである。
そうしてデベロッパーは、初めてモールを統治する統一した主体に変わり、それに応じてモールの魅力は、とくに地方の客にとってますます切実なものに変わっている。