坂口恭平の熊本脱出記(2)真夜中の激震〜なぜ僕は「避難所」で鬱になったか

坂口 恭平 プロフィール

やるべきことは、ただ一つ

真っ暗になったが、僕とメイは意識がはっきりしていた。フーとアヤコとユメ(姪っ子・13歳)とゲン(息子・3歳)はまだ寝ている。アオはやはり起きていた。僕はすぐにアオのところへ近づくと、手を強く握った。

部屋は床と柱が外れているのではないかと思われるほどに揺れていた。しかし、僕は不思議と恐怖心はなかった。どちらかというと冷静だったのかもしれない。状況があまりにも非日常すぎて、まるで映画をみているような気分だった。僕は自分のやるべきことを単純に導いた。

「全員を生きて外に出すこと」

すぐに家の外に出ることを決めた僕はメイにそれを伝えた。そして、大きな声で全員に伝えた。アヤコがすぐに玄関へ行き、玄関ドアを半開きにした。まだ揺れている。これはおさまりそうにない。天井が倒れてくるかもしれないとすら思った。

財布なんか気にしている場合ではない。僕はアオと一緒に玄関に向かうとアオとゲンの靴を取った。そして、アオに靴をはくように指示した。

フーを呼び、ゲンはいるかと確認。フーは、いるよ、と言った。フーはメガネをかけないとまったく見えないのだが、そのまま出てきた。

僕はゲンを見つけると、抱きかかえ、そして点呼を行い、そのまままず外に出ることを伝えると、自然に声が出た。

「ギターを持ってきて!」

アヤコがギターを持ってくると、僕は玄関をあけた。メイが懐中電灯をもってきて、それぞれに渡した。ドアを出ると、玄関とエレベーターホールの間にひび割れができ、完全に分離している。

アオは地震が起きてからというもの、こちらの非常階段を降りることを嫌がった。そこで僕は反対側の非常階段から降りることに決め、みなに伝えた。鍵もかけていない。それでもなんでもいい。僕の目的ははっきりしていた。とにかく全員無事に外に出ることだ。

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