坂口恭平の熊本脱出記(2)真夜中の激震〜なぜ僕は「避難所」で鬱になったか

坂口 恭平 プロフィール

僕はフーに「ギターに対する変な視線を感じて辛い。鬱がはじまったかもしれない」と伝えた。なんとどうしようもない男なのか。僕はそう自分のことを感じた。

フーは何も恥ずかしくない、ちゃんと私たちの命を守ってくれたんだから、と言ってくれたが、僕の鬱は治らない。そこでフーはゴミ袋にギターをいれて、体育館ドアの裏にギターを隠した。

余震は相変わらず続いている。一体、これからどんな人生が待っているのか。考えていると頭がじんじんしてくるので、考えない。

地震の最中は、生きることばかり考えていたのに、余震のときの僕はこれからのことをネガティヴに考え続けていた。このままでは頭がおかしくなりそうだと思った。妻も子供も。

家もむちゃくちゃでこれからどうするのか。もう耐えきれず、僕は睡眠薬を飲むと、そのまま5時間、何も考えずに深い眠りに入った。

第3回「余震は体に良くない!熊本脱出を決断」はこちら(gendai.ismedia.jp/articles/-/48482)

坂口 恭平(さかぐち きょうへい)
1978年、熊本県生まれ。建築家、作家、芸術家、音楽家。2004年、路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を刊行。『ゼロから始める都市型狩 猟採取生活』などで0円で生活する術をしめす。2011年、震災をきっかけに新政府を樹立し、『独立国家のつくりかた』を発表。2014年、小説『幻年時 代』で第35回熊日出版文化賞受賞、小説『徘徊タクシー』が第27回三島由紀夫賞候補となる。近著に第57回熊日文学賞を受賞した『家族の哲学』がある。 ツイッターはこちら→https://twitter.com/zhtsss

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