【前編】はこちらをご覧ください。
松岡 音としての言葉を見直すのと同時に、本を可視化できないかとも考えています。
島地 本を撮影するのって難しいんですよね。
松岡 そうなんです。誰に撮ってもらったらいいか考え、親交のあった写真家の十文字美信にお願いしたんですが、これは素晴らしかった。本からイメージを膨らませて、こっちが驚くくらい時間をかけて撮影をしてくれて、今まで見たことのない作品になりました。
島地 もしかして『千夜千冊』の巻頭のグラビアに掲載されているやつですか?
松岡 そうです、そうです。三島由紀夫の小説を取り上げたときは、三島が泊まった旅館の部屋を自分で借りて、寝間をつくって、そこで撮影したりと、まあ、驚きの連続でした。島地さんがどう感じるかわからないですが、声に出して読む、写真で可視化する、そんなアプローチをすることで、本の新しい楽しみ方が見つかるんじゃないかと期待しています。
島地 いや、おもしろい試みだと思います。そういうアプローチはまったく考えたことがありませんでした。
松岡 ところで、島地さんは交友関係がとても広いですが、経済界で「この人は本物の本読みだな」と感じたのはどなたですか?
島地 資生堂の福原義春さんと、元経団連会長の平岩外四さんですね。
松岡 また超大物の名前が出てきましたね。福原さんとはわたしもお付き合いさせていただいてまして、うちの事務所で誕生日をお祝いしたことがあります。そのとき福原さんに、「3人だけ、ほんとうに好きな人を呼んで一緒に祝いましょう」と提案すると、挙がってきた3人のなかに島地さんの名前が入っていました。
島地 福原さんとは最初に会った時から本の話で意気投合して、「書友」になってくださいと、いわれたことを覚えています。
松岡 いい言葉ですね、本を語り合う「書友」か。