2016.05.16
# 雑誌

社員30万人の最強企業トヨタで「偉くなる人」の共通点

部長・役員はどう選ばれるのか?
井上 久男 プロフィール

「俺が、俺が」は出世しない

※人数は常務理事以上は4月1日現在、基幹職1級以下は1月1日現在。基幹職1級、2級、3級はそれぞれ部長、次長、課長級のポスト

実はトヨタが求める人材像は明確で、一言で言えば、「花見幹事ができる人材」(元人事担当役員)。

自動車メーカーは社外の関係先が非常に多岐にわたるため、多くのプレイヤーをまとめあげる力が重要。花見では日取り、用意する酒や食事、予算の都合などを勘案しながら、最適な場に仕上げることが求められる。それは大袈裟に言えば、会社を切り盛りする中小企業の社長の仕事に似ている。

トヨタでは、若い時からこうした仕事ぶりを徹底させられ、価格や納期交渉などの場面で若手に仕事をやらせて、力量を見られる。

「言い換えれば、いくら頭脳明晰で優秀な人材でも、『俺が、俺が』の自己主張ばかりを押し通すタイプでは出世は望めない」(現役社員)

トヨタでは自分の仕事の実績だけではなく、いかに後輩や部下の面倒を見たかも大きく問われる。

トヨタ社内では、上司と部下、あるいは先輩と後輩の関係を「教え・教えられる関係」とよく言い、数年上の先輩が後輩の研修の講師をするという仕組みが、主任から管理職、役員になっても継続されている。チームプレイのできない人間は絶対に偉くはなれないのが不文律で、若い頃から多くの部下を束ねるトップマネジメントの資質があるかを見られる。

ある幹部は「入社3年目くらいまではお客様扱いで、おだてて木に登らせて、それを過ぎると下から火をつけて降りられないようにする風土がある」と言う。これは、若いときから苦難に放り込み、「やり抜く力」があるかを見るためだ。

 

実際、'13年からは「修行派遣プログラム」が始まった。これは大卒のホワイトカラーが入社4年目以降、海外事業体に派遣され、日本語ができない上司の下で仕事をしなければならないというものだ。

出向く先も英語圏とは限らず、東南アジアなどもあり、まさに「可愛い子には旅をさせよ」。何ヵ国語も使えるスーパー社員がトヨタにはいるが、語学力だけで偉くなれるわけでもなく、どこまで「やり抜けるか」という根本的な能力が見られる。

トップエリートが集うトヨタにあって出世競争は熾烈だが、最近では中卒入社の技能系から役員に抜擢されるなど、「人物本位」がより徹底されてきたとも言える。

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