「肉より魚」「牛肉より鶏肉」はどちらも間違い? 納豆は1日1パック以上食べてはいけない? 生野菜は身体に悪い? 「白米より玄米」も間違い?
運動は健康にいいと思い込み、長時間歩き続けたがために膝を痛めてしまう。それと同じで、実は体にいいと思っていた食材が、寿命を縮める可能性がある。常識を覆す、目からウロコの情報を公開する。
「脂肪は悪」は古い常識
「よく『歳をとったら肉をやめて、魚を多く食べたほうがいい』と言いますが、それは大間違いです。動物性脂肪を摂り過ぎるとコレステロールが上がり、動脈硬化が進むと思われがちですが、近年の研究で、コレステロール値が高い人のほうが長生きすることが明らかになっているんです。
コレステロールは骨や筋肉にとって欠かせないビタミンDの素になっているので、これが減ると寝たきりになるリスクも高まる。また『ハイポゴナディズム』と呼ばれる男性の更年期障害や老化にもつながります」
こう語るのは、『生涯現役「スーパー老人」の秘密』や『なにをどれだけ食べたらよいか。』などの著者で、桜美林大学名誉教授の柴田博氏だ。氏はさらに続ける。
「肉には脳を動かすセロトニンを作り出す必須アミノ酸のトリプトファンが多く含まれていますが、これが不足すると、うつや認知症を引き起こす可能性がある。魚からもトリプトファンは摂れますが、肉に比べて含有量が少ないので、60過ぎてもボケないで健康に長生きするためには、肉をしっかり食べる必要があるんです」
実際に長生きしている人は、魚より肉を摂っている。たとえば、92歳で亡くなった女優の森光子さんは、120gのステーキを毎日食べていたというし、史上最高齢でエベレストに登頂した冒険家の三浦雄一郎さん(83歳)も毎日1kg近い牛肉を食べていると明かしている。
「肉を摂らずに、マグロばかり食べていると水銀が体内に蓄積します。青魚も同様。そればかり食べていたら、体に害を及ぼす可能性がある。魚が健康にいいというのは神話に過ぎない」(柴田氏)
食事療法によるアンチエイジングに明るい、Rサイエンスクリニック広尾院長の日比野佐和子氏も「60をすぎると肉を摂ったほうが良い」と言う。
「魚しか食べないと栄養が偏ってしまいます。特に干物は塩分の摂り過ぎで高血圧になり、食道がんの発症率も高まる。肉を食べると血管が強化されるので、高齢者に多い、脳出血などのリスクも少なくなります。
また年をとるとヘルシーだからと勘違いして、鶏肉のささみなどを好んで食べる人がいますが、栄養価が低いので、むしろ赤身(牛、馬、鹿)の肉を積極的に摂ったほうがいい。
特に牛肉の赤身は鉄分を多く含んでいるので、鉄欠乏性貧血になりやすい女性は積極的に食べてほしいですね。鉄は体内の酸化物質を取り除いてくれるので、アンチエイジングにも効果的です。また白身の肉(鶏や豚)は鉄分が赤身と比べて2分の1しかないので、やはり牛肉のほうが望ましい」
高齢になってくるとついカロリーを控えることを意識しがちだが、日比野氏によると、カロリーを気にする前に栄養をしっかり摂るほうが大事だという。その上で基礎代謝を上げることが長生きには必要だというのだ。
さらに前出の柴田氏は「肉の脂身もちゃんと食べることが大切」と主張する。
「肉の脂肪は健康の大敵なんて『古い常識』です。肥満の原因はたいていが炭水化物の摂り過ぎ。脂肪に含まれる一価不飽和脂肪酸はエネルギー源となり、高齢者に不足しがちですから、ちゃんと食べないといけない。湯通しして脂を落としたり、脂身を切り取ったりすれば、栄養が不足してしまうのでやめたほうがいい」
では肉の中でもレバーやホルモンなどの内臓系はどうか。栄養満点で血液をサラサラにするというイメージがあるが、柴田氏は「内臓は高齢者にとってはおススメできません」と断言する。
「『内臓にはコラーゲンがたくさん含まれているから体にいい、若返る』なんてバカなことを言っている人がいますが、実はコラーゲンを食べても体内にはほとんど吸収されません。
肝臓(レバー)はたしかに栄養素を貯めていますが、高齢者は吸収が遅く、栄養素とともに貯蔵されている有害物質を分解する力も落ちている。単純にレバーが体にいいからと信じ込み、積極的に食べるのは極めて危険です」