「奨学金=借金」を返済できない
さらに近年、奨学金の滞納も問題化しています。
平成25年度末時点で返還をする必要がある342万人のうち、1日以上延滞しているのが約33万人、3ヵ月以上の延滞は約19万人となっています。
そして、なぜ延滞したのかという問いに対しては、複数回答において72.9%が「家計の収入が減った」、次いで34.5%が「家計の支出が増えた」であり、経済的な要因により延滞者が増加していると言えるでしょう(平成25年度奨学金の延滞者に関する属性調査結果)。
そして、これらの背景には、大学卒業後に例えば、非正規労働で働かざるを得ず、低所得になるなどの問題も存在します。
実際に、平成24年度総務省就業構造基礎調査に基づき、大卒の初職(卒業後にはじめて就いた仕事)就業時の雇用形態をみると、平成19年の「卒業から1年未満に初職についた人で非正規の割合」は13.8%、また、平成24年の「卒業から1年未満に初職についた人の非正規の割合」は、24.3%と、大卒の非正規率は急激に上昇しています(平成24年度総務省就業構造基礎調査の表167より筆者集計)。

給付型奨学金が必要な理由
ここまで、奨学金が抱える課題や論点を解説してきました。学費の上昇(公費負担の減少)や家庭の所得の低下、また、卒業後に非正規労働など低所得になってしまう、などのさまざまな問題が複合的にからまっていることが見えてきました。
では、どうやってこの問題を解決するのか。ずばり、給付型奨学金の導入が一番だと考えます。
もちろん、家庭の所得が上昇したり、たくさん借りても卒業後に好景気で高所得になり返済に苦労しなくなったりするのであれば、対策は不要です。しかし、現状、すぐさま効果がでる対策ではありません。
そのうえで、消去法的に考えると、現実的な解決方法は、「大学の授業料を無償化する」か「給付型の奨学金で支援する」の方法しかないわけです(大学進学にお金がかからなくするか、お金を支援するか、という2択)。
このうち、「大学の授業料を無償化する」という方法は、お金持ちも困っているひとも普遍的に享受できるという意味でユニバーサルな福祉だと思うのですが、なにぶん、大きな財源がかかる施策になってしまいます。議論をすすめてもらいたいものの、「来年度から導入する」といったスピード感では難しいのも事実でしょう。
一方で、給付型の奨学金は、対象の取り方などはこちらも難しい側面はありますが、誰しもが利用できるというよりは、低所得の家庭や成績優秀者など、一定程度の条件やしばりをつけることにより、対象者の選別が可能な施策ですので、財源の規模も限定的になるでしょう。
もちろん、家計を助けるために高卒で就職した人や過去に貸与で奨学金を借りた人との均衡を配慮する必要はありますが、即応的に課題解決を目指すには現実的です。