イギリス「EU離脱」をめぐる大混乱の実情~「タブー」に触れ、怒鳴り合う政治家たち

戦争、ヒトラー、DIY不景気…
小林 恭子 プロフィール
政府が配布した、EU国民投票についてのパンフレット

国民は、一体何を糧に残留あるいは離脱を決めればよいのか。

「英国が離脱すれば、EUがバラバラになる、ユーロ圏の破たんは英国にも影響する。だから、離脱しないでほしい」。昨年7月まで、ギリシャのユーロ離脱危機でEU側との交渉役だったヤヌス・バルファキス元財務相は、BBCのテレビ番組(5月29日)の中でこう発言した。

「私自身がエコノミストだが、エコノミストの見方は当たらないのが常だ」。数十人のエコノミストが残留を支持しているという、ある新聞記事を指して、こう言う。

「離脱後、経済がどうなるのかは誰も予測できない――EU始まって以来、加盟国が離脱するのは初めてのことだからだ」

決め手は「自分がどうしたいか」だという。「欧州にとって、最も重要な問いになる。欧州の民主主義を一緒に作っていきたいのか、外に出たいのか」。

元労働党政権の外相で離脱派のデービッド・オーエンはサンデー・タイムズ紙(5月29日付)のコラムをこう結んでいる。EUを離脱しても、英国は「外に向かってオープンな、生き生きとした、自分で自分のことを決める民主主義国家として、グローバル市場に製品を輸出し、繁栄を謳歌できると確信している」。

オーエンのコラムの反対の面には元労働党政権の首相で残留派のトニー・ブレアのコラムが並ぶ。「迷っていたら、残留を選択しなさい」がメッセージだ。

最後の最後は、「直感」――それしかないようだ。

小林恭子 (こばやし・ぎんこ)
在英ジャーナリスト。秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(共著、洋泉社)、訳書に『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。 http://ukmedia.exblog.jp/

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