ただそれは、カネを持った遊び人が女を侍らせて酒池肉林の豪遊をしている—という一般的なイメージとはほど遠い。証言を突き合わせると、むしろ複数の女たちにタカられ、骨の髄までしゃぶられながら横領を続けた羽染容疑者の姿が浮かび上がってくる。
最も容疑者の近くにいたのはAさんという女性。横領が発覚する前後まで、長岡駅近くの高層マンションに一緒に暮らしていたという。長年同棲しており、肉体関係もあったと見られる。
Aさんと容疑者は、入籍していたといわれるが、一方で内縁関係だったという証言もある。なお、ともにバツイチで、容疑者のほうは「子供さんやお孫さんが、長岡を訪ねてくることもあった」(容疑者の知人)。
二人はほぼ毎日、一緒に長岡駅近くにある和食割烹に通っていた。その店の常連客が言う。
「Aさんはダミ声の中年女性。とても美人とは言えませんが、テンションが高く社交的で、羽染さんとAさんが二人でいると、『陰と陽』という感じでした。Aさんは彼を『羽染』と呼び捨てで、羽染さんは『Aちゃん』と下の名前で呼んでいました。
Aさんはよく店内で、『ねえねえ、お給料出たんでしょ。お小遣いちょうだいよ』とねだったり、注文のときに『はい、羽染が洗心(高級日本酒)注文しました。洗心入りました!』とはやしたり、調子のいい感じがしました。そういう愛もあるのかもしれませんが……」
「痛々しいおじさん」
その関係は、多くの人の目に、「羽染容疑者が食い物にされている」と映った。容疑者とAさん、二人の共通の知り合いはこう語る。
「去年でしたか、羽染さんが車を買いたいとAさんに頼み込んでいる姿を見ました。Aさんは『もう車なんていらないでしょ』と高圧的な言い方ではねつけるんですが、羽染さんは腰を低くして『でも、人生最後の車だからさ、お願いします』と何度も何度もお願いしていました。
結局、Aさんのお許しがもらえたのか、その後、トヨタのハリアーハイブリッドを買ったみたいです。内装は革張りにして金のモール(ドアなどの縁取り)にしたって、自慢していました。
でもそういう会話を聞くと哀れでね。カネはAさんが管理して、羽染さんがコツコツ横領していたかと思うと……」
また、Aさんはハワイが好きで、年に何度も旅行にでかけていたという。
「でも、羽染さんは海外が苦手だからといって、そこにはついていかなかったみたい。おカネは羽染さんが出していたようですが」(Aさんの知人)