ついに中国は戦争への道を歩み始めたのではないか、という「強い懸念」

戦前日本を思い出す
長谷川 幸洋 プロフィール

ヤクザと同じ発想

つまり、習近平政権は発足直後から一貫して太平洋、東シナ海とその上空、南シナ海と縄張りの確保と拡大を目指してきた。当初は「新型大国関係」というキャッチフレーズの下、米国と合意の上での縄張り分割を持ちかけたが、それに失敗したので、実力で南シナ海を奪いにきたのだ。

こういう経緯を見れば、習政権が仲裁裁の判決が出たくらいで簡単に引っ込むと期待するほうがおかしい。縄張り拡大こそが習政権の本質といっていいからだ。

なぜ、それほど縄張り拡大に執着するのか。そこは諸説がある。

たとえば、軍事専門家は南シナ海を確保できれば、米国を射程に収める弾道ミサイル(SLBM)の発射可能な潜水艦を配備できるから、圧倒的に中国有利になる、という。いざ戦闘となれば、潜水艦は人工島よりもはるかに敵に探知されにくい。

経済専門家は南シナ海には天然ガスや原油など無尽蔵の資源が眠っているからだ、という。エネルギー資源輸入国である中国にとって、自国の支配圏からエネルギーを入手できるようになれば、経済発展だけでなく安全保障にとっても大きな利点になる。

いずれもその通りだろう。だが、私はもっと単純に彼らは「自分の縄張りを大きくしたいのだ」と理解すればいいと思っている。ようするに、ヤクザと同じである。

ヤクザは縄張り拡大が即、利益拡大と思っている。それと同じで、習政権も「縄張り拡大が国益拡大」と信じているのだ。こういう考え方は、私たちとはまったく違う。日米欧をはじめ民主主義国は世界が相互依存関係にあることを理解している。

自分の繁栄は相手の繁栄あってこそ。自国にとって貿易相手国の存在が不可欠であり、逆もまた真なり、と信じているから、互いの平和的関係を強化していく。そこでは平和と繁栄は一体である。だが、中国はそう考えていない。

「オレはお前の縄張りを尊重するから、お前もオレの縄張りを尊重しろ」。中国はそれが共存共栄と考えているのだ。けっして相互依存関係にあるとは思っていない。相手に隙あらば自分の縄張りを拡大したい。いま南シナ海で起きているのは、本質的にそういう事態である。

米国が南シナ海で航行の自由を完全に維持しようと思えば常時、空母を2隻は現地に派遣しておかなければならない、と言われている。だが米国にそんな余裕はないので、間隙を突いて中国はせっせと人工島に滑走路を建設してしまった。

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