2016.07.19
# 経済・財政 # ビッグデータ

「初乗り410円」タクシー値下げの本当の狙いを知っていますか?

加谷 珪一 プロフィール

業界初の値下げが進んだ理由

2014年時点における東京のタクシー、ハイヤーの台数は3万907台となっており、ピークだった2008年の3万7671台と比較すると18%も減少している。一方、全国のタクシー・ハイヤーの台数は24万853台で、まだ12%しか減っていない。

タクシーについては2002年には規制緩和が行われ、新規参入や増車が原則として自由になった。しかし安易な増車は安全性を損なうとの見解が根強くあり、2014年1月には「改正タクシー事業適正化・活性化特別措置法」が施行された。

改正法では、特定地域において約3年間の新規参入や増車を禁止できるようになっている。過当競争となっている地域では減車に向けた議論が進んでいる最中であった。

東京は過当競争に該当する地域にはなっておらず、自由競争の結果、すでにかなりの減車が進んでいる。供給が少なくなったことで、実車率や運送収入も底を打った状態にあり、値下げを受け入れる余地が出来ていた。

また今回の値下げには、タクシー最大手であり、業界に先がけて配車アプリを普及させるなど、積極的な経営を行ってきた日本交通が音頭を取った。業界最大手が動いたことで、他社も追随しやすかったものと考えられる。

では日本交通は、なぜ値下げに対してこれほどまでに積極的なのだろうか。この事情を理解するためには、日本交通が持つ二つの側面に着目する必要がある。ひとつは新しいテクノロジーを積極的に導入する先進企業としての側面。もうひとつはタクシーという既得権益を守ろうとする旧態依然とした側面である。

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