割り箸をくわえただけで、楽しい気分になるのはなぜか?
身体に起きた変化を、あとから認識することが、人間にはよくあります。
表情筋の研究で、割り箸を口にくわえて漫画を読むと、おもしろさが20%増したという実験結果があるそうです。
なぜ、おもしろさが増すのか。
それは、割り箸を口にくわえると口角が上がって、人間の脳がそれを笑顔と認識するからです。自分の顔が笑ったのだから、楽しいのだろうと脳が間違った判断をして、実際におもしろく感じてしまうのです。
この実験から、感情が行動を決めているのではなく、行動が感情を決めていることがうかがえます。楽しいから笑うのではなくて、笑うから(笑った表情をつくるから)楽しくなるわけです。
1974年、カナダの心理学者、ダットンとアロンの2人は、不安や恐怖を強く感じているときに出会った人に対して、恋愛感情を持ちやすくなるという学説を発表しました。彼らの実験は、吊り橋を使って行われたため、「吊り橋効果」と呼ばれています。
揺れる吊り橋の上で男女が出会うと、橋を渡るときのドキドキした感情を、吊り橋を渡った相手への感情だと脳が勘違いし、恋愛感情だと思い込んでしまうことがあります。
吊り橋理論も、割り箸の実験も、身体に出た反応に対して、あとから脳が意味づけしていることを明らかにしています。僕たちは、意識してから反応を起こしていると思っていますが、じつは、意識したときに、すでに反応は起こっている。意識が先で反応があとではなく、反応が先で意識があとだったのです。