2016.08.04

“無意識”なトップアスリートはなぜ、大活躍できるのか? 「ゾーンに入る」その正体

集中力を高めるコツとは
為末 大 プロフィール

「ゾーンの入り方を知っているか?」と問われると、正直、わかりません。

ただ、ヒントがあるとすれば、自分の心がかき乱されない状態をつくることだと思います。ほかのことに意識が向いてしまうと、集中が途切れて、ゾーンには入れません。ですから、集中を阻害する要因をできるだけ排除する必要があります。

僕がメダルを獲れたのは、没頭する力があったからだと思います。

選手の走力は、戦略的な要素と、身体的な能力から成り立っています。その走力がレース当日に何%発揮されるかは、「没頭する力」=「集中して試合に入り込む力」に影響される気がします。そして、没頭すればするほどゾーン状態に近づいていくのではないでしょうか。

集中は外から破られる

僕と仲が良かったアメリカ人選手は、人と目が合うことを極端に嫌がっていました。

人と目が合うと気が散ってしまうので、彼は夜のレースでもサングラスをかけていました。僕の場合は、他人に声をかけられるのが苦手でした。他人から声をかけられると、我に返ってしまうからです。だから僕は、レース前はあえて、放っておいてくれという表情をつくるようにしていました。

世界陸上やオリンピックといった大きな大会では、どうしても声をかけられることが多くなります。そこで僕は声をかけられないようにするために、自分を演出して、近寄りがたい雰囲気を出すようにしていたのです。

トイレに入り、能面のような表情をつくって表情を消します。

そして、ヘッドフォンをかけて、ウェアのフードを被る。

するとまわりからは、ピリピリしているように見えて、声をかけられなくなります。

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