2016.08.13

「オペレーション・アウゲイアス」リオ五輪の水面下で進められる、ドーピング壊滅作戦の実態

「五輪と薬物」通史
【PHOTO】iStock

ギリシア神話の王・アウゲイアス

日本人選手の活躍とともに、リオ五輪の盛り上がりがいよいよピークを迎えようとしている。南アメリカ大陸で初となるオリンピック開催に期待と不安が高まる中、8月6日に開催された開会式は、ポルトガルによる植民地化や日本人の移民等も織り込んだブラジルの壮大な歴史絵巻をプロジェクションマッピングによって再現、大きな感動を与えた。

しかし、ロシア選手団が入場行進を始めると会場がざわついたようだった。スポーツ仲裁裁判所(CAS)が「ソチ五輪でロシアは国家的なドーピングを行った」というクロ裁定を下したにもかかわらず、IOC(国際オリンピック委員会)はロシア五輪委員会を資格停止とせず、出場の可否を各国際競技連盟(IF)の判断に委ねた。

その結果、陸上と重量挙げは原則として排除されたが、それ以外の選手の大半は参加できることになったという複雑な経緯があったからだ。ロシア選手団全員を排除する国際パラリンピック委員会(IPC)の決断とはあまりに対比的だ。

確かに、ドーピングに手を染めていない選手にまで連帯責任を負わせるのは酷であり、金メダリストを多数輩出するロシアを排除すると、五輪メダルの価値が損なわれかねない。IOCにとっては、政治的な決着という批判を浴びせられることを前提とした、苦渋の決断であったに違いない。

実は、この「玉虫色の決着」の裏で、ある「作戦」が発動され、ドーピング腐敗に対する凄まじい闘いが繰り広げられていたことをご存じだろうか。作戦の名前は「アウゲイアス作戦」(Operation Augeas)。フランス検察が主導した、インターポール(国際刑事警察機構)の捜査体制だ。

古代ギリシアの英雄ヘラクレスが、腐敗した王様を倒した記念にゼウス神殿を建て、そこで競技会を開いたのが古代オリンピックの原型とも言われている。ギリシア神話に登場するその王様こそが「アウゲイアス」に他ならない。

五輪の裏に潜む腐敗した現代の「アウゲイアス」とは、いったい誰だろうか。

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