突然、公売中止に!魔物が棲むという「新宿のビル跡地」の呪い
「いわくつきの土地」で新たな動きが…東京のど真ん中にある500m2ほどの一等地。そこを舞台に数々の闇社会の住人たちが跋扈してきた。その「怨念の土地」で起きた新たな動き。だが、土地にかけられた「呪い」は、容易には消えない—。
駅から徒歩1分の超一等地
一日の乗降客数は360万人を超え、日本、いや世界最大級のターミナルのひとつに数えられる新宿駅。代々木方面へ臨む南口から見渡せば、巨大なバスターミナルが広がり、百貨店の高島屋をはじめ、オフィスビルが多数建ち並ぶ。
この新宿駅から徒歩1分ほどという超一等地に「その土地」はある。アスファルトでのっぺりと塗り固められた、493m2(約150坪)の更地。周囲にはJR東日本の本社、小田急ホテルセンチュリーサザンタワーといったビルが並ぶなか、そこだけまるで歯が抜けたようだ。道路に面してめぐらされた柵の前を、OLやサラリーマンが足早に行きかう。
一見、整備中のなんということもない土地だが、実は、この土地と、そこに建っていたビルをめぐっては十数人が逮捕され、幾人もの死者が出たいわくつきの物件だ。昭和から平成に時をまたぎ、バブル期に醸成された「土地への欲望」に取りつかれた数多の魑魅魍魎が蠢いた。「日本で一番ダーティな土地」と言っても過言ではない。
不動産業界の人間であればその名を知らぬ者はいないその土地は、「真珠宮ビル跡地」という。
誰も触れたがらないこの土地で新たな動きがあったのは、今年8月26日のことだった。ビル跡地が、東京都によって公売にかけられ、落札されたのだ。ついにあの土地が売られる—。
入札日、東京都庁舎の入札室にひとりの男性が現れ、購入価格を記した書類を提出した。コンビニに弁当や惣菜などを販売する武蔵野グループの傘下企業・武蔵野ハウジング(本社・埼玉県朝霞市)の担当者である。
結果、武蔵野ハウジングが落札。価格は31億1000万円。ビル近くの不動産業者が言う。
「公売の最低落札価格は約24億円でしたが、数億円上乗せするのもうなずけます。真珠宮ビル跡地は非常に好立地。駅から近く、面積も広い。人通りが多いわけではないので商業施設には向きませんが、オフィスビルにすればすぐ埋まる。また、この一等地に自社ビルを建てられれば、企業としてハクがつき、こんなにいいことはありません」
しかし、いわくつきの土地の「宿命」だろうか、落札の直後に不可解なことが起きた。同社が所有権移転の手続きをした後、決済の直前になって、公売そのものが取り消されてしまったのだ。
人気を集めることが必至という土地で公売が行われ、なぜその取引が成立しなくなるのか。公売が行われた事情を、不動産関係者が解説する。
「この土地の実質的な管理者はA氏という男性。かつて旧川崎財閥の資産管理会社社長の番頭を務め、株価操縦で逮捕歴もある人物です。山口組系暴力団の元組長とも知遇があると言われます。
真珠宮ビル跡地は、あの立地ですから、買いたいと思っている企業は多い。しかし上場企業はもちろん、社会的に認知された規模の企業は、かつてここで起きた事件も含めて、コンプライアンスの観点から購入に踏み切れない。A氏の人脈から、反社組織への利益供与を疑われる可能性もあるからです」