2016.09.28
# 食育

「学校給食」の不都合な真実…こんなものを子供に与えていいわけない!

『菊乃井』店主・村田吉弘氏が憤慨

学校に通う子供たちの楽しみである「給食」が今、危機に瀕している。食育とは名ばかりのヘンテコなメニューに、日本らしさは見る影もない。問題だらけの給食事情に、日本和食界の大家が物申す。

献立も食器もおかしい

日本は山紫水明の国です。北は北海道から南は沖縄まで、飲めるような軟水が豊富に湧き出て、国の周りには四つの海流が流れていて、獲れる魚種は世界一。国土の7割は山で、平野部にミネラル分の多い土壌が広がる。

そんな恵まれた環境で暮らす日本の子供たちがあまりにひどい給食を食べさせられているんです。

代表例は魚。全国規模の話として、給食で使う魚は生ではなく、味の落ちた冷凍のものに限られています。

さらに問題なのは、それら味の落ちた冷凍食材を使って意味不明な料理を提供していること。私の記憶にあるものだと「サバのソース煮」。日本には醤油や味噌といった伝統的な味付けがあるはずなのに、なぜかウスターソースをかける。これではサバ本来の美味しさなどまるで感じられない。

もっとひどいのは、センター給食を採用している自治体です。センター、つまり民間業者が一括して給食を作っていますが、そこでは衛生面を重視するあまり、野菜などの生ものは85℃で3分間以上加熱しているところも見受けられました。だから野菜炒めなんかはクタクタになって原形を留めていない。しかも工場から学校に届ける間に冷め切ってしまう。当然、味はお察しのとおりです。

以前、刑務所の食事風景を見学させていただきました。そうしたら給食よりよっぽど豪華なんですよ。大人用だから一人当たりの量が多く、魚は丸々一尾。各刑務所で調理しているから、味噌汁も熱々のまま配膳される。それがなぜ子供たちには叶わないのでしょうか。

こう語るのは京都・祇園にある老舗料亭『菊乃井』の三代目主人、村田吉弘氏だ。同店はミシュラン京都・大阪が発売された'09年から最高ランクの三ツ星を獲得し続けている日本料理店の最高峰。主人の村田氏は同店の東京進出や機内食の監修など様々な試みに意欲的に取り組んできた。

そんな日本を代表する料理人が学校給食の実態について憤りをあらわにする。

そもそも私が給食、ひいては子供の「食育」に関心を抱くようになったのは、'13年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことがきっかけでした。文化遺産登録は世界に対して「和食という文化を保護し、後世に継承していく」と約束したのも同然です。

そこで和食文化の価値向上を牽引する組織として、「和食文化国民会議」の立ち上げに携わり、副会長を務めることになりました。そしてまず、「食育」の要である給食の見直しに乗り出したのです。

ただ、給食の現状は想像以上に悲惨なものだと、実際の給食風景を見て初めて気付かされました。

牛乳もその一つ。確かに日本の酪農のことを考えると、給食で牛乳を出すこと自体は間違っていないと思います。それに、あれだけのカルシウム分を一度に摂取できる食材は他にはない。

しかし、ご飯を食べながら牛乳を飲むという行為には納得しかねます。休み時間や放課後に飲ませるという方法があるはずで、白米を主食とした給食の時には、やはりお茶を飲ませるべきです。

食器についても問題があります。昔は、茶碗に小鉢、汁椀と細かく分かれていたはずの食器が、洗浄するのに都合がいいからとひとまとまりになったトレーを使っている。

これでは料理が混ざって味が分からなくなったり、器の正しい持ち方を学べなくなる恐れがあります。実際、私が給食風景を視察に訪れた時には、犬みたいな食べ方を覚えてしまった子供たちも見受けられました。

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