これは日本の縮図だ
ーーこの小説で描かれている最高裁判所の描写については、瀬木さんが最高裁に在職していた当時の実体験を1つのヒントにされているのではないかと思いますが、現在の最高裁も、これと似たような状況にあると見てよいのでしょうか?
瀬木 大筋はこんなものだろうと思います。
時代が変わっていくらかましになった部分もあるでしょうが、『絶望の裁判所』等にも書いたように、2000年代に刑事系が司法制度改革を利用して実権を握った時代以降、全般に、より悪くなっている部分も大きいと思います。差し引き、雰囲気は、この小説に描かれているものとそれほど極端な差はないでしょう。
もっとも、これは小説ですから、描写は虚構ですし、リアリティーを確保するためにそんな虚構をより濃密に凝縮しているという部分はもちろんあります。
でも、おそらく、司法界以外、たとえばビジネスパースンや行政官の世界、あるいはジャーナリズムの世界でも、この小説によく似た経験を実際にされた方は多いはずです。そういう意味では、日本の縮図、あるいは、日本のエリートの世界の縮図をリアルに描いたつもりです。
ーー興味深いお話が尽きませんが、次回は、本書のストーリーにも密接に関わってくる原発訴訟等について、さらにお話をうかがいたいと思います。
瀬木 こちらこそ、よろしくお願いいたします。
(次回につづく)