おときた:実際、リベラル陣営の意気込みは本当に強くて、本当に毎回背水の陣で戦っている。でも、そこに票を入れる人のことを考えたら、毎回背水の陣ってなんか違いませんか、もっと戦略持ってやったほうがいいんじゃないですか、とは思ってしまいますね。
極端に言えば、「今回は負けてもいい」という選挙をするべきなんじゃないでしょうか。今回は負けるけど、ボーダーはここ、という現実的な目標設定をして、それを達成すればいい。達成できなくても、どこまで達成できたのか、という振り返りをする。そういう選挙をしないで、勝つか負けるかだけ考える、負けたら死ぬ、みたいな選挙をしていたら、それは総括できないですよね。「だって、死んだんだもん」みたいな。
斎藤:All or Nothingなんですよね。
おときた:たぶん、鳥越さんの陣営にしても、「今回は文春が出たから終わりだ」「負けだ」となっていた。しかし、そこで「150万票は死守しよう」とか戦略を立てて後半戦を戦っていたら、きっと違う結果が出ていたはずです。その上で、実際は約135万票だったときに「この15万はなぜ埋められなかったのか」とかいうことまで考えることができれば、きっともっと、建設的な議論ができる。問題はそこにある気がしています。
斎藤:あと、玉砕主義なんだよね。
おときた:そう思います。よく「軍靴の足音が〜」とか言うわりには、マインドが戦時中っていう。
斎藤:だから、私はリベラルって戦争中の日本軍にすごく似ていると思うの。負けが込んでいるし、「敵」の保守の人たちの方が勝ち慣れているしさ。
おときた:僕ら保守はリアリストなので、選挙で負けるにしても、次点で負けるのか、3着なのかで全然意味が違うと思っているんですよ。負けは同じなんだけど、次点に1票でも積み上げて4年後に再起を図ることを考える。そういう次につながる負け方なんて、リベラルの人は考えないんだろうな、と思うんですよね。
斎藤:それは、やっぱり負け続けているからだよね。“選挙は続くよ、どこまでも”だと思っていて。でも、勝つか負けるかだけじゃなくて、「有権者は候補者を育てるものだ」とか、そういう発想が必要なんだよね。
おときた:民主主義において、「とりあえずの結論」が出ただけなんだから、4年後にまたビジョンを描き直せばいいんですよ。そういう発想がなくて、毎回「最後の決戦」をしていると、とりあえずの結論を軌道修正するためのロードマップが頭に描けないんだと思います。
1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年、『妊娠小説』(筑摩書房/ちくま文庫)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房/ちくま文庫)で第1回小林秀雄賞を受賞。他の著書に、『モダンガール論』(文春文庫)、『物は言いよう』(平凡社)、『名作うしろ読み』(中公文庫)『名作うしろ読みプレミアム』(中央公論新社)、『戦下のレシピ』(岩波現代文庫)、『紅一点論』『本の本』(ちくま文庫)、『月夜にランタン』『ニッポン沈没』(筑摩書房)など。最新刊は『学校が教えないほんとうの政治の話』(ちくまプリマー新書)。
1983年東京都北区生まれ。私立海城高校・早稲田大学政治経済学部を卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループに入社。化粧品ブランド・ゲラ ンで営業・マーケティング経験を経て、2013年に東京都議会議員選挙(北区)に出馬・初当選。ネットを中心に積極的な情報発信を行い、日本初の「ブロガー議員」として活動中。共著に『ギャル男でもわかる政治の話』がある。 http://otokitashun.com/