
筒香が「俺たちの番だ」
私は、経営とチームが一丸となる組織にしたかったので、就任1年目の春のキャンプイン前日、選手、コーチ全員の前でもまず、経営のことを話しました。観客動員の推移や球団の現状も伝え、選手によるファンサービスの必要性を訴えました。
普通はキャンプの方針を話す場なので「なんで経営の話を俺たちに……」という選手の声が漏れ伝わってきました。でも、私たちが経営で努力し、選手たちには野球で結果を出してもらう。お互いに「プロ」として目指すべきものを明確にして、ともに伸びていく相乗効果を狙ったのです。
今春のキャンプの時には、主将の筒香嘉智選手やチーム関係者が「これだけお客さんが入った。次は、俺たちの番だ」と言ってくれました。
私は、チーム編成に「関与」はしても、「介入」はしません。なので、私の考えを理解してもらうために、監督と密に対話しています。
昨シーズンはオールスター前に首位で折り返しながら、そこから最下位に転落しました。選手と本物の信頼関係を築き、たとえ負けが込んでも、揺らぎが生じないチームにしてほしい、と要望しました。
アレックス・ラミレス監督はそのブレない姿勢を、采配で示してくれた。大砲・ロペス選手が、勝負どころの8月、30打席連続無安打と大スランプに陥りました。
しかし、ラミレス監督は我慢して起用し、8月25日の阪神戦からロペス選手をそれまでの5番から3番にあげ、その試合で31打席ぶりの安打に、本塁打まで飛び出した。
試合には敗れ、4位・阪神と0・5ゲーム差に迫られましたが、その阪神戦から2位・巨人との3連戦までの4試合でロペス選手は打率6割以上、2本塁打と大爆発。チームの3タテに貢献し、初のCS出場を加速させました。
私はシステムや組織作りはしましたが、そこから先は監督にお任せしました。結局、普通の会社がやっていることと、同じなんです。経営者が明確なビジョンを示し、現場がそれに応える。成功はそこにしか、生まれません。
「週刊現代」2016年12月17日号より