2016.12.23

わずか5年でハマスタが常時満員!伝説の球団社長が明かす「組織論」

DeNAベイスターズ「再生までの道」
週刊現代 プロフィール
'10年に5000人だったファンクラブ会員が今年は7万5000人まで増加〔PHOTO〕wikipediaより

筒香が「俺たちの番だ」

私は、経営とチームが一丸となる組織にしたかったので、就任1年目の春のキャンプイン前日、選手、コーチ全員の前でもまず、経営のことを話しました。観客動員の推移や球団の現状も伝え、選手によるファンサービスの必要性を訴えました。

普通はキャンプの方針を話す場なので「なんで経営の話を俺たちに……」という選手の声が漏れ伝わってきました。でも、私たちが経営で努力し、選手たちには野球で結果を出してもらう。お互いに「プロ」として目指すべきものを明確にして、ともに伸びていく相乗効果を狙ったのです。

今春のキャンプの時には、主将の筒香嘉智選手やチーム関係者が「これだけお客さんが入った。次は、俺たちの番だ」と言ってくれました。

 

私は、チーム編成に「関与」はしても、「介入」はしません。なので、私の考えを理解してもらうために、監督と密に対話しています。

昨シーズンはオールスター前に首位で折り返しながら、そこから最下位に転落しました。選手と本物の信頼関係を築き、たとえ負けが込んでも、揺らぎが生じないチームにしてほしい、と要望しました。

アレックス・ラミレス監督はそのブレない姿勢を、采配で示してくれた。大砲・ロペス選手が、勝負どころの8月、30打席連続無安打と大スランプに陥りました。

しかし、ラミレス監督は我慢して起用し、8月25日の阪神戦からロペス選手をそれまでの5番から3番にあげ、その試合で31打席ぶりの安打に、本塁打まで飛び出した。

試合には敗れ、4位・阪神と0・5ゲーム差に迫られましたが、その阪神戦から2位・巨人との3連戦までの4試合でロペス選手は打率6割以上、2本塁打と大爆発。チームの3タテに貢献し、初のCS出場を加速させました。

私はシステムや組織作りはしましたが、そこから先は監督にお任せしました。結局、普通の会社がやっていることと、同じなんです。経営者が明確なビジョンを示し、現場がそれに応える。成功はそこにしか、生まれません。

いけだ・じゅん/1976年横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、住友商事に入社。その後、博報堂では企業再建業務にたずさわる。'07年にDeNAに入社し、'12〜'16年シーズンに横浜DeNAベイスターズの初代社長をつとめた。12月中旬に著書「しがみつかない理由」(ポプラ社)が刊行予定

「週刊現代」2016年12月17日号より

関連記事