東南アジア各国から外国人技能実習生を受け入れている「国際事業研究共同組合」(本部・高松市、白井知之・代表理事)という組織があるのをご存じだろうか。
同組合は、これまで受け入れてきた実習生を国別に分け、「介護技能実習生のポテンシャル」と題して「真面目で純粋で高徳な人材が集まるか」「介護への適正・性格」などを点数とともに評価した一覧表をHP上に掲載していた。
この表には東南アジアの実習生だけではなく出身国そのものを見下した、「差別的」ともとれる表現が含まれていたため、すぐさま海外を含む各方面からの厳しい批判にさらされ、組合は一覧表を削除した。
法務省や厚生労働省は現在、こうした外国人実習生を受け入れ斡旋する組織を、現在の野放し状態から統制下に組み込む組織の立ち上げを進めており、今後、問題のある組織の淘汰が進むものとみられている。
総合評価最低のタイで批判の狼煙
「国際事業研究共同組合」はHPで同組合がこれまで受け入れてきたミャンマー、インドネシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、タイからの技能実習生を対象に「介護への適正・性格」「日本語学習・能力」「宗教」「日本への興味・親日度」「真面目で純粋で高徳な人材が集まるかどうか」など全8項目にわたる評価を掲載していた。
介護適正総合点(満点100点)ではミャンマーが87点と最高点であり、以下ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジアと続き、タイが最低の49点となっている。

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しかし各項目の評価に関して記載された「判断基準の詳細」を読んでみると、いずれも首を傾げたくなるものばかりであった。
たとえば「介護への適正・性格」では「心から弱者をいたわる奉仕の気持ちがあるかどうか。年長者を尊重する国民性かどうか」を評価の基準にしていることが明記されている。
また「宗教」項目の判断基準は「宗教が日本の介護施設に受け入れられるかどうか」であり、「日本への興味・親日度」では「親日国家かどうか。日本に対する強い憧れがあるかどうか」となっている。
「日本語の学習・能力」の項目では「学習能力が高いかどうか」という判断基準に加えて「日本と言語体系が似ているか。日本語能力が高い人がすでにたくさんいるか」が基準として明記されている。
この一覧表に対し、総合点で最低評価を受けたタイがまず反応した。インターネット上でこの一覧表を取り上げ「素面で評価したとは思えない」「これを公開する神経がわからない」などと批判の狼煙をあげた。
もちろん日本での反応も同様で、次のような厳しい意見がネット上に飛び交った。
「どんな国であろうと、個人によって性格や資質は大きく異なるのは当然のこと。それを国籍ごとに比較採点し、適不適のレッテルを貼るのは完全な差別行為です」
「来日する外国人技能実習生たちは言葉や文化を理解しきれていない弱いマイノリティの立場です。彼らに対してこの組織はどれほどいたわる気持ちを持っているのでしょうか」
「この採点表が存在する以上、彼ら彼女らを人格を持った対等な人間として扱っているとは決して言えません」
確かに、ごく限られた実習生の考え方や宗教などからその国の国民性を評価すること自体には無理があるといわざるをえない。さらに、実習生の日本語能力は極めて個人的な資質である。それなのに「その国の言語が日本と言語体系が似ているか」を基準にすること自体、首をかしげざるを得ない。
日本語能力に関してはミャンマーとインドネシアがともに最高評価となっている一方で、タイやカンボジアは最低レベルとなっている。これはタイ語やカンボジア語が日本語の言語体系に似ているかどうかが問題ではないと思われるのだが、どうだろうか。