フジテレビ「池上彰特番」が犯した、残念すぎるレベルの3つのミス

問題は、あのグラフだけじゃなかった…

ゴールデン番組でやってはいけないレベル

先週16日(金)、午後8時からフジテレビで3時間の『池上彰緊急スペシャル』という特番が放送された(http://www.fujitv.co.jp/b_hp/ikegamiakira_sp/)。

格差はなぜ世界からなくならないのかという課題を、池上彰氏が解説し、ゲストのタレントや一般参加者が聞くという番組だ。

真面目な番組ではあったが、ネットでの評判はさんざんだ。番組内での「アメリカでの格差が最近広がった」という指摘は正しかったものの、アメリカと比較して、「日本の格差も酷い」という点の指摘がまずかった。

池上氏が「格差」を示すために使った図表が酷いと、ネットで酷評されたのだ。その表は、以下のとおりだ。番組が2時間くらい進行した時に出てきたものだ。

この二つの図は、日本とアメリカで、上位1%と下位90%の平均所得の推移を表したものである。しかし、一目でわかるが、日本とアメリカで縦軸の目盛りが違っている。日本では0.8から1.4までであるが、アメリカでは0.5から3.0である。日本のほうが、アメリカより4倍ほど大きく見せて盛っているのだ。

こうした図のトリックは、子供騙しの典型であるが、まさかテレビのゴールデン番組で見られるとは驚いた。

 

このデータの出所は、The World Wealth and Income Database(http://www.wid.world/#Database:)であるので、誰でも容易に池上氏の図の間違いを指摘でき、正しい図を作ることができる。

筆者も、昨年初めにピケティ氏が話題になったとき、2015年2月23日付の記事『「ピケティ格差解説」番組に出たら、出演者がみんな「所得トップ1%に入る年収」だった』(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42212)を書いたときにこのデータベースを使ったので、アメリカと目盛りを合わせた正しい図を載せておこう。

日本の格差は、上のコラムを見てもらえればわかるが、先進国の中ではそれほど広がっていない。そのひとつの理由は、日本の所得税や相続税の最高税率が、先進国の中で最高水準であるからだ。

池上氏の番組では、日本の格差はそれほどでもないという事実を言わずに、「日本の格差が酷い」という前提で話が進められているので、後で述べるように、提言もピンぼけになっている。

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