時々無性に食べたくなる「町の中華食堂」が絶滅の危機!

消えゆく昭和の味、楽しむなら今だ

「町中華」とはなんだ?

町中華とは、中華料理を中心に、安い値段でさまざまな食事を提供する食堂の総称である。

確実にあるのはラーメンと炒飯くらいのもので、主力メニューである餃子やタンメンでさえあったりなかったり。かと思えば和食であるはずのカツ丼や親子丼、カレーライス、洋食からはオムライスなど節操なく提供。

セットメニューとか定食とか、腹ペコ野郎たちをねじ伏せる炭水化物中心の品揃えに力を入れ、ビールや単品料理で昼間から一杯やりたい客にも目配りを怠らない。

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ぼくはこういう店が好きで、2014年に町中華探検隊を結成して以来、仲間とともに都内各地に出撃しては調査・研究に勤しんでいる。まぁ食べるだけなんだが。

そんなことをしていると「町中華って旨いんですか?」と勘違いされたりするけれど少し違う。おいしいに越したことはないが味は二の次。千円以内で腹一杯は町中華の基本なので値段や量にもこだわらない。

むしろ、さして特徴がなく、たいして旨いとも思ってないのに、なぜか週に一度は行きたくなる店にこそ真髄があると思っている。この感覚、独身時代に"半チャンラーメン"の世話になった40代以上の男ならわかってくれるんじゃないだろうか。

ところが、どこの町にもあるごく普通の町中華が絶滅危惧種になりつつある。

嘘だろうと思われるかもしれない。ぼくも最初はそうだった。でも本当なのだ。もともとの数が多いから目立たないだけで、徐々に数を減らしている。

 

探検隊の活動では、毎回ひとつの町を何人かで見て回るが、下調べした店のうち、ひとつやふたつはすでに廃業していることがザラ。

しかも、その確率は年々高まっており、こないだ食べたばかりの店が突然シャッターを下ろすことも珍しくない。

なぜか。店主が倒れてしまうのだ。

ご多分に漏れず、町中華界にも深刻な高齢者問題が忍び寄っているのである。後継者がいない。店主が後を継がせようとしない。

多くの食材を使用し、多彩で安価なメニューを揃える業態は、もはや儲からないのである。

さっき千円以内で腹一杯と書いたが、牛丼からうどん、丼、ハンバーガーまで、町に出ればワンコインでそれを実現する店が目白押し。ラーメン好きは専門店へ行くし、中華が良ければ駅前に女性でも気楽に入れるチェーン店がある。

個人経営の大衆的な中華屋が独身男御用達だった時代は過去のもの。町中華は一期一会の段階に入った。

だからこそ、元気なうちに食べ、記録することが大事なのだ。

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