未来にあるのは幻滅か感動か
本書をいま手に取ったあなたは、たぶん99%以上の確率で、AlphaGo(アルファ碁)の名前を見たことがあるでしょう。
そして、AI(Artificial Intelligence)についてはまったく知らないながらも、AIに対し、漠然とした畏敬の念をいだいているでしょう。そして(!!)、AIが対局中に何を「考え」ているかを知りたい、と思っているでしょう。
本書は、(AIが上達していく歴史を、わが子が成長していく様を愛情をもって見守るように眺めることを時にしながら)AIが対局中に何を「考え」ているかを、AIやプログラミングのことをまったく知らない人にわかりやすく説明する本です(もちろん、プログラミングの入門書ではありません)。中学生でも理解できる基本的な内容だけを平易に紹介する本です(ごくまれに逸脱はありますが)。
説明のために使う用語は、とっつきやすさ、わかりやすさの点から選んであります(読者が既知の用語で理解できる内容については、その用語をなるべく使用しました)。とくに第6章で、AlphaGoについての原論文で使われている用語を避けているのは、そのためです。
1984年にデュードニー(A. K. Dewdney)は、彼自身が担当しているサイエンティフィック・アメリカン誌のコンピューター・リクリエーションのコラムで以下のように述べましたが、本書でAIの内部の仕組みを知ったとき、あなたはそれと同じようには感じないでしょう。
「ゲーム・プログラムの解析記事の中で、プログラムの内部の動きがあらわにさらけ出されている部分を読んだりすると、幻滅を感じてしまうことが多い。逆に、中でどう動いているかをまったく知らずにプログラムと対局した場合は、ありもしないはずの高度な知性がプログラムに備わっているのではないかと夢見ることができる。」(A. K. Dewdney, “A program that plays checkers can often stay one jump ahead,” Computer Recreations, Scientific American, July 1984[萩谷昌己訳])
AIの内部の仕組みを知ったとき、あなたが感じるのはきっと、AIの内部の仕組みを考案した「人間の英知」への感嘆でしょう。
あなたを待っているのは、はたして幻滅か感動か――では、さっそく楽しい探索の旅に出発しましょう!
2017年1月 小野田博一

東京大学医学部保健学科卒。同大学院博士課程単位取得。日本経済新聞社データバンク局に約6年間勤務。ICCF(国際通信チェス連盟)インターナショナル・マスター。JCCA(日本通信チェス協会)国際担当(ICCF delegate for Japan)。主な著作に『論理パズル「出しっこ問題」傑作選』『10歳からの論理パズル「迷いの森」のパズル魔王に挑戦!』『超絶難問論理パズル』『ようこそ「多変量解析」クラブへ』(以上、講談社ブルーバックス)、『数学〈超絶〉難問』(日本実業出版社)、『数学難問BEST100』(PHP研究所)など多数。
対戦型AIで学ぶ基本のしくみ
小野田博一=著
発行年月日: 2017/01/20
ページ数: 256
シリーズ通巻番号: B2001
定価:本体 1000円(税別)