南スーダン撤退 あの日報を引きずり出した情報公開請求の「威力」

全ては一つの疑問から始まった
現代ビジネス編集部

情報公開は有力な「武器」である

ようやく公開された「日報」。そこに「戦闘」という文言が何度も出てくるため、「ジュバは安定している」という政府の従来の見解に偽りがあるのではないか、という議論に発展したのは、周知のとおりだ。

「第11次隊が派遣される前に日報が開示されていれば、自衛隊に駆け付け警護を付与すべきかどうかについて、もっと活発かつ有益な議論が交わされていたはずです。国民や国会が真実をもとに議論する機会を奪われたということを、深刻にとらえなければなりません。

不幸中の幸いというべきか、今回の請求がきっかけとなって再度議論がはじまり、安倍首相は南スーダンの撤退を決断しました。日報が公表されたことが今回の撤収の政治判断に少しでも寄与したならば、情報公開によって国会や国民の間で活発な議論が行われ、それが政治判断に反映されるという、国民主権のひとつの「理想形」を実現できたことになります。それは喜ばしいことだと思っています。

そして、私は過去の取材でも情報公開制度を利用してきましたが、改めて情報公開の重要性を認識しました。

この国は、これまでにも増して重要な情報を国民に開示しない方向に傾いている――私はそう感じています。マスメディアが、国家権力が隠す『不都合な真実』を暴いてくれればいいのですが、残念ながら今のメディアの状況をみると、それにも限界があるでしょう。情報公開制度は私たちがもっと利用すべき、誰にでも使える有力な『武器』なのです」

 

日本で情報公開制度がはじまったのは、2002年のこと。総務省ホームページには施行以降の開示請求件数が公開されており、年々その数は増えている。が、主な請求内容は「不動産登記に関するもの」や「医薬品の承認関係」など、ビジネスに関わるものがほとんどだ。国の政策に関わるような情報の公開は、そもそも請求の数が少ないか、あるいは「不開示」とされる場合も少なくない。

さらに、総務省は不開示となる6つのケースを挙げているが、<審議・検討等に関する情報で、意思決定の中立性等を不当に害する、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報>というものがあり、これが厄介だ、と布施氏は言う。

「過去に情報公開請求を行ってきたなかで、何度かこの理由を盾に開示を拒まれたことがあります。しかし『この情報が表に出たら、反対意見が出てきて困る』というのは、前提がおかしい。可能な限りの情報を国民に提示して、反対意見も踏まえて議論しながら政策決定を進めていくのが、民主主義国家のあるべき姿でしょう。だから、情報公開法では『原則開示』とされているのです。

ところがこの国では、情報公開制度を支えるべき予算も人員も十分ではない。さらにいえば、そもそもなぜ必要なのか、という理念の共有が進んでいないのです。仏作って魂入れず、ということです。

今後も、私は情報公開制度を積極的に利用します。日本の場合は、重要な情報が真っ黒に塗り潰されて出てくることも多く、つい使えないと思ってしまいがちですが、そのこと自体をSNSを通じて発信し可視化することも重要です。今回の日報はまさにそうでしたが、そうすることで、政府・行政が何を国民に隠そうとしているのか、いかに情報公開に熱心でないかを訴えることができますから。

それを繰り返すことで、次第に現状の情報公開制度には問題がある、という認識が広まって、改善に向かっていくことを期待しています」

一通の情報公開請求が、国の決定を動かす可能性がある――。制度施行から15年という節目に起こった「日報問題」を奇貨とすべきだ。

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