東芝にくすぶる「新たな不祥事」の火種
どうやら冗談ではないらしいアメリカのお墨付き
「ウエスチングハウス(WH)は米国で原子力発電所を建設中であり、(親会社である)東芝の財政的安定が重要だ」――。
経済産業官僚の目論見通りだっただろう。訪米中の世耕弘成経済産業大臣が日本時間の先週金曜日(3月17日)、ロス商務長官とペリー・エネルギー長官からこの言葉を引き出すことに成功したという。政府・経済産業省はお墨付きを得たと言わんばかりで、縮小したはずの東芝支援を復活させようと勢い付いている。
主力銀行によると、東芝が完全売却も視野に入れて本体から切り離した「東芝メモリー」に、官民ファンドの産業革新機構や政府系金融機関の日本政策投資銀行(DBJ)が出資する案や、DBJが産業再生機構や東芝、東芝メモリーに融資する案が浮上している模様だ。

長年にわたって経営の悪化を隠す粉飾決算に手を染めたうえ、それから2年経っても経営を立て直すどころか、一段と事態を悪化させた巨大企業に、庶民の税金などで集めた公的資金を野放図に投入するという。
リーマンショック以降、米国では貧富の格差が拡がり続ける中で、公的資金が頻繁にウォール街の巨大金融機関やデトロイトの自動車メーカーの救済に使われて、蓄積された庶民の不満が人種差別と保護主義を標榜するトランプ政権誕生の原動力になった。
欧州の極右政党の勢力拡大とともに、国際的な緊張に拍車をかける動きであり、憂慮せざるを得ない状況である。
とはいえ、経営に失敗して市場から退場すべき巨大企業を安易に公的資金で救済することは、自由主義経済を歪める。
このところ、民間経済への官僚支配を強化しようとする政府の傍若無人ぶりも目に余る。われわれ国民はそろそろ、はっきりとノーの意思表示を示して、こうした誤った政策に待ったをかける必要がありそうだ。