会社を成長させるには、「総合職」を廃止せよ

働き方改革は、そこからはじまる
中野 円佳 プロフィール

3つ目の要因として、会議の中で「日本企業は海外企業に雇い負けしている」という指摘があった。日本人が香港やシンガポールで働くことを選ぶ、優秀な女性が外資系企業に就職する、あるいは外国人留学生がせっかく日本に来て就職しても離職してしまう…といったことが実際に起こっている。多様性がないこととトートロジーではあるが、こうした「人材の確保」も企業にとっては成長に対するリスクになる。

以上のような理由で、経産省の当該会議では投資家にとっても「ダイバーシティ」が重要という認識が広がっていることが確認された。そこで企業と市場の対話としての情報開示の必要性などがアクションプランに入ったわけだ。

働き方改革ともリンクする

この会議では、もう1つの論点として「働き方改革」もたびたび話題にあがった。委員が共通して「ダイバーシティをやろうとすれば働き方改革に自然と手を付けないといけなくなる」「働き方改革とダイバーシティ推進はセット」という認識を持っていたともいえるだろう。

つまり、「24時間働けます、いつどこにでも転勤します」という前提を付けていればおのずから女性や外国人を排除してしまうというわけだ。これについては、企業側、投資家・ガバナンス関係者も同じ認識をしていたと感じる。

先日、日経新聞で「投資会社ブラックロックが投資先に働き方改革についてのレターを送った」と報道されていたが、ESG投資が盛り上がる中では投資家サイドも働き方を今後注視する動きが広がっていくだろう。ダイバーシティを進めること、働き方改革を進めることは経営者にとってもはや必須の戦略になる。

なお、会議の中で「企業に働き方についての情報開示を義務付けることはできないのか」と何度か提案したが、「形式的に目指しても意味がない」との意見もあり、実現には至らなかった。

裏を返せば、いかに改革を実行し、それを投資家にPRできるかは個々の企業に任されることになる。これまで人事任せ、CSR的位置づけで他部署を巻き込み切れていなかった企業もあろうが、IRも含め、ダイバーシティ戦略を本気で進めないといけなくなる。

長時間労働の根本原因

会議では、労働市場との対話についても議論された。私は労働市場に対してもわかりやすい情報開示の必要性を何度か訴えた。今年度の就職活動が本格化する中で、学生たちには企業の働き方やダイバーシティの進み度合いをきちんと見極めてもらいたい。

採用とその後の育成という意味では、会議の派生イベントである経済産業省主催のシンポジウムで、新卒採用からジェネラリスト的に人を育てる「総合職」という枠組み自体を疑う必要性についても問題提起もした。

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