「朝鮮半島緊迫化」が世界経済にもたらすリスク
日本は、なにをすべきか3月10日、韓国の朴槿恵大統領(当時)が歴代の大統領として初めて罷免された。韓国最大の財閥、サムスンの事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長も起訴され、韓国は国のトップと経済界の総帥が不在という異常事態に直面している。世論はこれまでの政権、財閥への批判を強めているだけに、世論に後押しされた捜査は厳しさを増すだろう。
一つ気がかりなのが軍事的挑発を続ける北朝鮮の動向だ。韓国と中国の関係が冷え込み始めたことも重なり朝鮮半島の情勢は一段と複雑化しており、北朝鮮の暴走にはなかなか歯止めがかからない。米国も北朝鮮に対する強硬姿勢を示唆し始め、これ以上の状況悪化を防ぐためには、韓国の政治・経済が落ち着きを取り戻し、韓国自身が国力を増強し北朝鮮に対する抑止力を高めることが必要だ。
一段と混迷の色彩高まる韓国情勢
韓国は、荒海を漂流する船のようだ。輸出依存の経済は低迷が続いている。そして、政治、経済、軍事に関する独裁的な決定権を持つ大統領も不在だ。財閥企業の経営も一時期の勢いはない。それに加えて家計の債務も増加している。世界経済の環境が悪化すると、韓国にとってかなりのショックがあるだろう。
そうした状況下、韓国の世論は既存の政治への不信を募らせ、政権中枢と癒着してきた財閥の解体を求めている。韓国では、これまで財閥企業の業績拡大をテコに経済成長を目指してきた。そして、財閥の創業者一族は事業運営への配慮などを求めて政権にすり寄り、不正な資金授受などのスキャンダルが続いてきた。その結果、韓国経済ではサムスンなどの財閥企業による寡占状態が続いてきた。
財閥中心の経済運営が進んだ結果、中小企業の育成などを通した内需の拡大は進んでいない。そのため、国民の多くは韓国経済の高成長を実感しづらい。この状況を変えるためには、民主主義に基づく政治運営の基盤整備、財閥企業による寡占の是正といった構造改革が必要だ。そして、構造改革は一時的な失業増加などの痛みを伴う。改革を進めるためには、国民に選ばれた大統領のリーダーシップが欠かせない。
実際に改革を進めることは口で言うほど容易ではない。足許、韓国の政治は民衆の不満解決に向かい始めている。次期大統領選の候補者の主張には、慰安婦問題の再交渉など日韓政府間で解決済みの事案の蒸し返しを目指すものが多い。そうした政治が進めば、経済格差の是正などの本質的な問題解決は進まないだろう。その代わりに、これまで以上の反日政策が採られ、目先の支持獲得を重視した政治が進む可能性が高い。