運動しなさすぎるのも問題だが、間違ったウォーキングは「老化」を進行し、健康寿命を縮める。
では理想的なウォーキングとは、一体何なのか。
青柳氏によれば「一日8000歩で、その内、早歩きを20分することが一番望ましい」という。
「中之条町の人たち5000人を調べた結果、これくらいが一番健康に効果的であることが分かりました。だらだらと歩数を歩いても効果は薄いので、その内20分ほど早歩きして『中強度』の活動を入れることが大切です。
冬場は歩く歩数が減っても構わないし、毎日必ずやる必要もない。70歳を過ぎれば『5000歩で、その内、早歩きを7分』でも問題ありません」

朝、歩いてはいけない
もう一つ、重要なのが、ウォーキングを行う際の時間帯だ。
「朝は脳卒中や心筋梗塞の死亡率が一番高い時間帯です。血液がドロドロの状態で、水も飲まずに歩き出すと、命取りになる。
また朝は一番体温が低く、筋肉や関節が固くなっています。もしウォーキングをするのなら、夕方が望ましい。そうすると体温が上がり、寝る時には下がるので、深い睡眠を取ることができ、認知症の予防にもつながります」(青柳氏)
早稲田大学スポーツ科学学術院教授で医学博士の赤間高雄氏は「高齢者がウォーキングを始める場合、その方のそれまで長年の生活習慣をベースにして運動量や強さを考えなくてはいけない」と語る。
「たとえば心筋梗塞の原因となる動脈硬化の危険因子を持っている人もいれば、そうでない人もいる。それでなくとも、高齢者の場合、加齢という危険因子がひとつ増えるし、運動するための身体的機能にも個人差があるので、初めから『これくらい歩かないといけない』と一律に決めつける必要はありません」
青柳氏も続ける。
「『こんなに歩数が少なくていいの』と物足りなく思う人がいるかもしれませんが、実は健康な人は、家事や買い物など日常生活だけで、5000歩ほどは歩いているんです。
あとは小一時間外出したり、犬の散歩でもしたりすればそれで十分。ウォーキングはしなくていい。それより『一万歩以上、歩けば歩くほどよい』と変な強迫観念に駆られて、無理に歩くほうがよっぽど危険です」
難しく考えすぎるのではなく、自然体で気楽に捉えることが「一番の健康法」になのだ。
「週刊現代」2017年4月15日号より