2017.04.14
# 地震・原発・災害 # 社会問題

ときどき死にたくなるあなたへ…坂口恭平の新政府総理談話(1)

熊本大地震から1年が過ぎて
坂口 恭平 プロフィール

風がいつも吹き抜けるようにしておくこと

7月に熊本に戻ってきて、今は同じマンションの4階で家族と地震前と同じ生活を送っている。

逃げたのに、戻ってきたのか、と言われたこともあった。はい、そうです。もう余震もないから戻ってきた。

海外に行くとか言ってたじゃないか。もちろん、余震が続いているようであれば、それも考えたかもしれない。でも熊本で暮らしていることがもともと楽だったから戻ってきた。一時的に避難するのはいいが、東京で暮らすことは考えられなかった。

というわけで戻ってきた。今は地震もほとんどなく、安心した暮らしができている。

おびえていた娘も、トイレこそいまだに一人では行けないが、夜怖くて眠れないということもなくなり、避難しているときに横浜の小学校の同級生から教えてもらったフラ教室に通っている。

踊っていると、心が落ち着くと娘は言った。娘も逃げないと生きていけない性質なのかもしれない。

(c) Kyohei Sakaguchi

もしまた地震が起きたら、危険を感じたら、逃げるだけ。僕たち家族は、いつでも逃げられるような環境をつくることだけを念頭に置いている。

だから会社なんか行けないのである。何が起きても逃げてはいけない、というやり方の制度や社会とはまったく付き合えない。

ところが、それでもなんとかやっていけている。そういう人間がいてもいいのである。別に村八分にもあっていない。そういう人と思われているのだろう。それでかまわないし、むしろそっちのほうがありがたい。檻の中に入るのはごめんなのだ。

いつでも逃げられること。これが僕の生活の基本である。

目に見えるような壁や柵のある空間で暮らさないこと。

風がいつも吹き抜けるようにしておくこと

そうしないと息がすぐ詰まってしまう。そして、僕はそうなってしまうと、すぐに死にたいと思ってしまうのだ。

(→第2回「死にたいときに、布団の上でできること」はこちら gendai.ismedia.jp/articles/-/51463

まだ何もやり遂げていなかったけど、ぼくらは自由だった。誰もが通り過ぎてきた人生の断片を、鮮やかに、ときに痛切に、詩的文体で描き出す。坂口恭平が放つ傑作青春小説。4月27日発売!

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