「引き裂かれた文科省」現役官僚たちの胸の内

官邸が怖くて口には出せないけれど…
週刊現代 プロフィール

出会い系バーには何をしに?

事実、前川氏が分け隔てない上司であったとしても、中堅以下の官僚にとって事務次官は「雲の上」と称されるほど、遠い存在である。文科省の前で、退庁する若手官僚たちに話を聞くと、こんな批判もあった。

「正直、なんでいまさら、という感じです。現職(次官)の時に言うならまだわかりますが」

「前川さんは確かに人望のある人ですが、それにしても余計なことをしてくれた。この問題の尻拭いでてんやわんやですからね。国会対応も増えて、徹夜するのは僕らです」

「前川さんは、今は責任をとらなくていい民間人でしょ。でも火の粉は私たち現場に降りかかってくる。迷惑だと思っている同僚も多いですよ。この件に関しては、上から『しゃべるな』と言われてますんで、すみません」

彼らの言い分もまた、一面では真実だろう。だが冒頭の中堅キャリア官僚は、なぜ前川氏が、こうしたリスクを承知のうえで立ち上がったのかについて、「それは、官僚として忘れてはならない信念を冒されたからだ」と言う。

「(流出した文科省の)内部文書は、ああいったペーパーを事務方が作るのは通常業務の一環ですし、前川さんのところにそれが上がっていても、まったくおかしくない。

われわれ官僚にとって重要なのは、結論がどうなるかよりも、その過程で正しい議論がなされたかどうか。ですから前川さんは、別に安倍政権を潰したいとか、官邸に打撃を与えたいと思っているのではないはずです。

前川さんはあくまでも、われわれは誰のために仕事をしているのか、という『筋』を純粋に通したかった。根っからそういう人なんです」

 

歌舞伎町の「出会い系バー」で、夜な夜な女性に声をかけていた――菅氏は前川氏について、この一点のみを強調し、彼が教育行政マンの倫理に悖る人物だという「印象操作」を続けている。

前川氏は、「『女性の貧困』を身をもって知るために、実際に会って話を聞いてみたいと思って、お店を探して行ってみた」と話している。この説明自体には、耳を疑った国民も多かっただろう。

しかし、かつて前川氏の先輩として机を並べた元文科官僚の寺脇研氏は、こう証言する。

「まず前提として、彼は仕事が圧倒的にできる。人望だけで事務次官にはなれませんから。入省当時から、『これは将来の次官候補だな』と先輩たちから言われていました。

それに加えて、前川さんは『実地調査』が本当に好きなんです。私は30代の頃、福岡の教育委員会に出向していたのですが、当時の筑豊には貧しい方が大勢住んでいた。東京に戻って彼にその話をしたら、『ぜひ僕も見たい』と言うから、週末を使って連れて行ったことがあります。もちろん旅費は自費でした」

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