「夏の人事」で何かが起きる
先述の通り、前川氏一人を潰したところで、文科省内部には無数の前川シンパが存在する。そして、たとえ堅く口をつぐんでいようと、文科省の現幹部の多くが、内心で「前川さんは立派だ」と拍手を送っていることを、官邸が把握していないはずがない。
菅氏と官邸が繰り出してくる次の一手は、ことによれば、文科省全体を焼き尽くし、二度と立ち上がれなくするような「浄化作戦」になる可能性がある。その兆候に気付いている官僚もいる。
「当然のことながら、官邸はわれわれの人事を握っています。特に安倍政権になってから、霞が関では『交流人事』と称して、まったく別の省庁の幹部がいきなり審議官以上の重要ポストに就くことも少なくありません。
『この夏は、前例がないほど大きな交流人事があるんじゃないか』ともっぱらの噂です」(前出・文科省中堅キャリア)
文科官僚は自らの職場を「三流官庁」と言って自嘲する。権力を握ってでかいことをしたい、大金を稼ぎたい、そういう連中は経産省や財務省に行けばいい。オレたちは、そんなふうに要領よくはやれない、と。先の中堅が続ける。
「私も人のことは言えませんが、文科にはマジメ一辺倒な人が多い。前川さんもそうです。前川さんがこれだけ叩かれても、文科官僚がどうすることもできないのは、『オレが国を変えてやる』という義憤だとか、政治的な根回しとかに今一つ疎いからでしょう」
賽は投げられた。抵抗しようがしまいが、安倍総理と菅氏は文科省をお構いなしに叩き潰そうとするだろう。前川氏のように「筋」を通すことが、彼の後輩たちにはできるだろうか。
「週刊現代」2017年6月17日号より